個人間融資の掲示板「レディハート」は、自分のサイトの「合法ですか?」というページで、個人が個人からお金を借りるのは合法で、利息が法定金利(109.5%)以内であればよい、という趣旨を書いています。一方、金融庁のリーフレットは、個人であっても繰り返し貸すつもりでお金を貸せば貸金業にあたり、国か都道府県の登録が必要だと説明しています。同じ「個人間融資」について、掲示板と金融庁は正反対のことを言っています。この記事では、掲示板自身が載せている説明と、金融庁・国民生活センターの注意喚起、実際に摘発された事件を並べ、掲示板で「貸します」と言う相手が何者なのかを確かめます。
この記事の以前の版について
以前の版は、窓口や制度の一般的な説明が本文の多くを占めていました。それらを削り、掲示板と公的機関の実際の記載、報道された事件だけで書き直しています。
掲示板が言うことと、金融庁が言うこと
2026年9月29日に、レディハートのサイトと、金融庁のリーフレット「#個人間融資に要注意!」を読み比べました。
| 論点 | レディハートの「合法ですか?」ページ | 金融庁のリーフレット |
|---|---|---|
| 個人が貸すこと | 個人が個人からお金を借りるのは合法 | 個人であっても、繰り返し続ける意思をもってお金を貸すことは、貸金業法上の「貸金業」にあたる。貸金業を営むには国か都道府県の登録が必要 |
| 利息 | 法定金利(109.5%)内でなければならない | (登録の無い貸付そのものが問題) |
| SNSや掲示板への書き込み | ― | 不特定多数が見られるSNSなどで「お金貸します」「融資します」と書き込んで契約を勧めることは、「貸金業を営む目的をもって、貸付けの契約の締結について勧誘をすること」にあたるおそれがある |
| 罰則 | ― | 無登録営業は10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、無登録業者の勧誘は2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(リーフレットの表記) |
※レディハート「個人間融資は合法なんですか?」、金融庁「#個人間融資に要注意!」(リーフレット)の記載を要約(2026年9月29日確認)。
掲示板の説明は、友人どうしの一度きりの貸し借りのような場面なら当てはまるかもしれません。けれど、掲示板に「貸します」と書き込み、知らない人から次々に申し込みを受ける相手は、まさに金融庁のいう「繰り返し続ける意思をもって」貸す人です。「個人だから登録はいらない」「109.5%以内なら合法」という説明は、掲示板で繰り返し貸す相手には当てはまりません。利息が109.5%以内でも、登録が無ければ無登録営業です。
リーフレットは、無登録の業者による勧誘そのものにも、2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金という罰則があると示しています。つまり、掲示板に「貸します」と書き込む行為は、実際に貸す前の段階で、すでに罰則の対象になりうるということです。その書き込みを見て連絡した時点で、相手はすでに法律の線を越えているかもしれない相手だと考えてください。
レディハートのサイトの見出しには、「金融ブラック、主婦、学生でも借りられる」「他のサイトより数倍返信が来ます」と書かれています。収入が安定していない人や、信用情報に記録がある人は、正規の業者の審査に通りにくい立場にあります。掲示板の宣伝文句は、まさにその人たちに向けて書かれていました。正規の業者に断られた理由を確かめないまま掲示板に向かうと、断られた理由よりずっと重い問題を抱えることになります。
金融庁のリーフレットは、個人間融資の危険として、個人を装ったヤミ金融業者による違法な高金利での貸付けと、個人情報が悪用されて犯罪被害やトラブルに巻き込まれることの二つを挙げています。そして、個人間融資を使おうと思っている人に向けて、ヤミ金融業者による個人間融資は利用しないよう呼びかけています。
掲示板自身が載せている「よくある詐欺手口」
興味深いのは、レディハートが「よくある詐欺手口」というページも自分で載せていることです。そこに並んでいる項目を、そのまま拾います。
| 掲示板が挙げる手口 | 意味すること |
|---|---|
| 先振り込み(紹介料、審査料、手数料、交通費など) | 貸す前にお金を払わせ、そのまま消える |
| 返済能力の確認として見せ金を要求 | 手元のお金を見せる名目で送金させる |
| 名義貸し案件の紹介や、架空の身分証明書作成の手引き | 借りる側に犯罪をさせる |
| 銀行口座の売買やレンタル、担保、質入れ | 口座が犯罪の道具になり、渡した本人も罪に問われる |
| 携帯電話の売買やレンタル、担保、質入れ | 同上 |
| SNSやゲームサイトのポイント、コインの現金化 | 貸付を別の取引に見せかける |
| わいせつな行為、写真の要求 | 性的な要求を融資の条件にする |
※レディハート「よくある詐欺手口」の項目(2026年9月29日確認)。右の列は当サイトの補足。
同じページは、これらの要求に応えてもお金は借りられないことが多く、相手と連絡が取れなくなる可能性が高いこと、口座の売買やレンタルは犯罪で、借りる側も罪に問われることがあると書いています。掲示板を運営する側が、自分の掲示板でこれだけの手口が使われていると認めているということです。七つの項目は、どれも掲示板で相手とやり取りを始めた後に出てくるものでした。書き込みを読んだだけでは、どの相手が危ないかは見分けられません。
掲示板のトップに並ぶ案内
レディハートのトップページには、2026年9月10日更新として、ある銀行系のカードローンについて「自己破産している人やどこからも借りられない人でも全員が枠50万円のカードを作れている」「無審査でカードが通る」といった内容の案内が、招待コードの説明とともに載っていました。また「合法ですか?」などのページには、「管理人からの連絡」として、特定の消費者金融への申し込みを勧め、「ブラックの方でも申し込みした人が先月は98%の方が借りれています」「申し込みブラックなどにはなりません」と書かれていました。
これらの記載が事実かどうかは、当サイトでは確かめられません。ただし、「申し込みブラックにはならない」という一文は、信用情報機関の決まりと合いません。CIC・JICCは、申し込みで照会された記録を照会日から6か月保有すると公表しています。申し込めば記録が残り、短い間に何社も申し込めば、その記録が並びます。「すべて申し込むのをお勧めします」という案内のとおりに動けば、審査に通りにくくなる方向に進むことになります。信用情報の記録と消える時期は、別の記事で公式の記載から整理しています。 → ブラックリストはいつ消える?CIC・JICC・KSCの公式の記載
つまり、この掲示板は、個人どうしの貸し借りの場であると同時に、別の金融商品へ申し込みを誘導する入口にもなっていました。「個人間融資の掲示板」と名乗っていても、運営する側が何で収入を得ているのかは、画面の案内を読めば見えてきます。
国民生活センターに寄せられた相談
国民生活センターは2019年6月14日、「SNSなどを通じた「個人間融資」で見知らぬ相手から借入れをするのはやめましょう!」と注意を呼びかけました。発表には、SNSや掲示板サイトを通じた個人間融資の相談が全国の相談窓口に寄せられており、違法な高金利による貸付けが行われたケースもあると書かれています。報告書に載った相談事例から、三つを計算します。
| 相談の内容 | 当サイトの計算 |
|---|---|
| (2018年7月受付・50歳代男性)掲示板サイトにお金を貸してほしいと書き込み、返事をしてきた人と直接会って計15万円を借りた。これまでに50万円以上返済したが、さらに400万円を払うよう連絡がきた。相手は自分の住所を知っている | 借りた額の3倍以上をすでに払い、そのうえで借りた額の約27倍を求められている |
| (2018年7月受付・20歳代男性)SNSで60万円の融資を申し込むと、「まず2万円を振り込むので、そのまま返して。そこで審査する」と言われ、口座などの情報を伝えた。やめたいと伝えると、「すでに1万円を振り込んだので、1週間後に3万円を返すように」と言われた | 1万円に対して1週間で3万円。上乗せは2万円で、受け取った額の2倍。年に直すと約1万% |
| (2019年2月受付・20歳代女性)携帯電話料金の滞納などで借りられず、SNSで融資してくれる人を募った。100万円を借りることにしたが、20万円の融資に対して1万円の保証金が必要と言われて5万円を払い、その後連絡がつかなくなった | 100万円÷20万円×1万円=5万円。借りる額が大きいほど「保証金」も大きくなる形で、払った5万円は戻らなかった |
※国民生活センター(2019年6月14日公表)の報告書本文の相談事例。カッコ内は受付年月と相談者の属性。右の列は当サイトの計算。2つ目は、相談者が振り込みをまだ確認できていない段階の話として紹介されている。
二つ目の事例では、相談者は借りるのをやめようとした段階で、すでに「借りたこと」にされていました。「審査のため」に口座を教えただけで、1万円を勝手に振り込まれ、3万円を返せと言われる。掲示板やSNSの相手に口座を教えることが、どれだけ危ういかを示しています。レディハート自身が挙げる「先振り込み」「見せ金」とは逆向きの、「押し貸し」と呼ばれる形です。
三つ目の事例は、レディハートが「よくある詐欺手口」の最初に挙げる「先振り込み」そのものです。借りたい額が大きいほど保証金も大きくなるように見せ、払わせた後に消える。掲示板の運営者が自分で手口として書いていることが、そのまま国民生活センターの相談事例にも出てくるということは、この形が実際に繰り返されている証拠と言えます。
国民生活センターは同じ報告書で、「個人間融資」をうたっていても、反復継続の意思をもって金銭の貸付けを行う場合には貸金業の登録を受ける必要があり、無登録営業は貸金業法違反になると説明しています。金融庁のリーフレットと同じ考え方で、掲示板の「個人だから合法」という説明とは食い違います。報告書には、融資の条件として性的な要求をされるケースもあると書かれていました。
4件の相談に共通する流れ
報告書には、もう一つ、30歳代の女性の事例(2019年2月受付)が載っています。個人間融資のサイトを使っていた知人を通じて15万円の融資を頼むと、「総額100万円を超す返済額になる」と言われ、写真を送れば利息を免除すると持ちかけられました。下着姿や裸の写真を送りましたが、融資は受けられず、連絡も途絶えたという相談です。4件を並べると、入口と結末に共通点が見えてきます。
| 事例 | 入口 | 相手に渡ったもの | 結末 |
|---|---|---|---|
| 50歳代男性 | 掲示板に「貸してほしい」と書き込んだ | 住所 | 15万円に50万円以上払い、さらに400万円を求められた |
| 20歳代男性 | SNSの「個人で融資します」 | 銀行口座などの個人情報 | やめたいと伝えると、1万円を振り込んだとして3万円を求められた |
| 20歳代女性 | SNSで融資してくれる人を募った | 保証金5万円 | 連絡が途絶えた |
| 30歳代女性 | 個人間融資のサイトを使う知人の紹介 | 下着姿や裸の写真 | 融資は受けられず、連絡も途絶えた |
※国民生活センター報告書(令和元年6月14日)の4事例を当サイトが整理したもの。
4件とも、入口は掲示板やSNS、または個人間融資のサイトでした。そして4件とも、お金を借りる前か、借りた直後に、住所・口座・現金・写真のどれかが相手の手に渡っています。借りられたかどうかにかかわらず、相手に何かを渡した時点で、主導権は相手に移っていました。自分から「貸してほしい」と書き込んだ人も、相手の書き込みに応じた人も、結末の形は変わりません。
国民生活センターは、この報告を消費者庁、内閣府の消費者委員会事務局、警察庁、金融庁に情報提供したと記しています。個人間融資は、消費者行政と警察、金融行政がそろって注意を向けている問題だということです。
掲示板やSNSで貸していて、摘発された人たち
掲示板やSNSで客を集めていた貸し手が、実際に摘発された例を並べます。
| 報道の時期 | 内容 | 出どころ |
|---|---|---|
| 2021年 | 掲示板やTwitter(現X)で大規模に個人間融資をしていた男が、貸金業法違反と出資法違反の疑いで書類送検された。男女110人に計約1,680万円を貸し、約600万円の利益を上げていた。交渉はLINEに誘導して行っていた | ダイヤモンド・オンライン(2026年5月、東京情報大学・堂下浩教授) |
| 2025年2月 | 埼玉県警が、SNSに「給料日に返済可能でしたら融資します」などと投稿した29歳の消防副士長を、貸金業法違反(無登録営業)の疑いで逮捕。ヤミ金業者の指示で広告を出し、客への貸付額に応じて報酬を受け取る仕組みで、「広告を見て約50人が融資を希望した」と供述したとされる。「ヤミ金業者への返済のため客を集めていた」と容疑を認めた | 産経新聞(2025年2月18日、しもひがし法務事務所ブログに抜粋) |
| 2026年3月 | 静岡県警が、インターネットの掲示板などで客を募り、1日1.8%の利息を取っていたとして、東京都内の夫婦ら3人を出資法違反の疑いで再逮捕 | TBS NEWS DIG(2026年3月4日、しもひがし法務事務所ブログに抜粋) |
2025年の埼玉の事件は、とくに重く受け止めるべきものです。逮捕された男は、ヤミ金への返済のために、ヤミ金の指示でSNSに融資の広告を出していました。掲示板やSNSで「融資します」と書き込んでいる人の中には、自分もヤミ金に借金をしていて、客集めをさせられている人がいるということです。その書き込みに応じた人は、次の客集めの担い手にされるかもしれません。
2021年の事件の男は、利息を109.5%以下に抑えようとしていたと伝えられています。それでも、無登録で繰り返し貸していたことで書類送検されました。レディハートの「109.5%以内なら合法」という説明が、実際の摘発の場面では通用しなかったことを示す例です。性的な関係を条件にする貸付の実態は、別の記事で詳しく扱っています。 → ひととき融資とは
「1日1.8%」を年に直す
静岡県警が扱った事件の1日1.8%は、年に直すと657%です。出資法は、業として貸す場合に年20%を超える利息を刑事罰の対象とし、年109.5%(1日0.3%)を超えるとさらに重い罰則を定めています。657%は、その重い罰則の線の6倍、年20%の約33倍です。10万円を借りれば、1日で1,800円、1か月(30日)で5万4,000円の利息になる計算です。掲示板で「個人だから良心的」と思って借りた相手の条件が、実際にはこの水準だったということです。
掲示板を開いてしまったときの手順
1.「個人だから登録はいらない」という説明を信じない
金融庁は、個人でも繰り返し貸すつもりなら貸金業にあたり、登録が必要だとしています。相手に登録番号を聞き、答えられなければそこでやめてください。
2.口座番号・身分証・勤務先を、貸してもらう前に送らない
国民生活センターの事例では、「審査のため」に口座を伝えただけで、1万円を振り込まれて3万円を求められました。
3.掲示板の「詐欺手口」に書かれた要求が出たら、その場で終える
先振り込み、見せ金、口座や携帯電話の売買、写真の要求。掲示板自身がこれらを詐欺の手口として挙げています。
4.「申し込みブラックにならない」という案内をうのみにしない
申し込みの記録は6か月残ります。何社も続けて申し込むのは避けてください。
5.すでに返済を求められているなら、一人で払い続けない
15万円を借りて50万円以上払った後に400万円を求められた人もいます。やり取りの画面と振込の記録を残し、次のページの順番で外に相談してください。 → ソフト闇金より先に確かめること
まとめ:個人間融資の掲示板レディハートは「個人間融資は合法、利息は109.5%以内」と説明していますが、金融庁は、個人でも繰り返し貸すつもりなら貸金業にあたり、登録が必要で、SNSなどで「融資します」と書き込むことも無登録の勧誘にあたるおそれがあるとしています。掲示板自身が、先振り込み・見せ金・口座や携帯電話の売買・写真の要求を「よくある詐欺手口」として挙げ、トップには申し込みを誘導する案内が並んでいました。国民生活センターの事例では、15万円を借りた人が50万円以上払った後に400万円を求められています。掲示板やSNSで貸していた人は、書類送検・逮捕されています。掲示板の「貸します」には応じず、口座も身分証も送らない。それが、この入口から身を守る一番確かな方法です。
出典:レディハート「個人間融資は合法なんですか?」「よくある詐欺手口」・トップページ(2026年9月29日確認)/金融庁リーフレット「#個人間融資に要注意!」/国民生活センター 報道発表資料(令和元年6月14日、個人間融資に関する注意喚起)/CIC「CICが保有する信用情報」・JICC「信用情報の内容と登録期間」/ダイヤモンド・オンライン(2026年5月9日)/産経新聞(2025年2月18日)・TBS NEWS DIG(2026年3月4日)(いずれも、しもひがし法務事務所ブログの抜粋で確認)。

