古い家や小屋の壁に残る、赤と白の「マルフク」の看板。あれを出していた株式会社マルフクは、電話加入権を担保にお金を貸す「電話担保金融」の会社で、2009年1月に貸金業を廃業しています。2026年10月6日に金融庁の登録業者の検索で「マルフク」を引くと0件でした。看板の会社は闇金ではなく、そもそも今は貸金業をしていません。
一方で、その「マルフク」という名前を使って、偽の登録番号を掲げ、携帯電話を買わせる手口の闇金がいたことが、闇金の情報サイト2つに記録されています。この記事では「マルフク ヤミ金」と検索した人が知りたい2つのこと――看板の会社は何だったのか、今マルフクを名乗る相手は何者か――を、問いの形で順に分けて確かめます。
問い1:看板の「電話の金融」とは何だったのか
マルフクの看板には、名前の下に「電話の金融」や「レンタル」といった言葉が入っています。ここで言う「電話」は、固定電話を引く時に必要だった「電話加入権」のことです。
固定電話を新しく引く時、NTTに「施設設置負担金」を払います。NTT東日本の2005年2月10日の発表では、この負担金は72,000円(税込75,600円)で、2005年3月1日から半額の36,000円(税込37,800円)に下げると書かれています。払った人には電話を使う権利が残り、その権利は売り買いもされていました。7万円を超えるお金を払って得た権利なので、それ自体に値打ちがあり、お金を借りる時の担保にもなった、というのが電話担保金融の前提です。
| 項目 | 2005年2月まで | 2005年3月から |
|---|---|---|
| 施設設置負担金(加入電話) | 72,000円(税込75,600円) | 36,000円(税込37,800円) |
| ライトプランの加算額(月額) | 640円(税込672円) | 250円(税込262.5円) |
NTT東日本「施設設置負担金の見直しにかかる契約約款の届出について」(2005年2月10日)。ライトプランは、新規契約の時の負担金を払わない代わりに、月々の基本料に上乗せして払うプラン。
NTT自身が負担金を半分にしたことで、電話加入権の値打ちの土台も半分になりました。NTT東日本は2004年12月のお知らせで、負担金を見直す理由として「施設設置負担金を取り巻く市場環境の変化」を挙げています。携帯電話が広がり、固定電話を新しく引く人が減っていった時期です。担保の値打ちが下がり続ければ、それを担保に貸す商売は成り立ちません。
電話加入権を担保にできた仕組み
NTT東日本の同じお知らせは、電話加入権を「加入電話契約者が加入電話契約に基づいて加入電話の提供を受ける権利」(電話サービス契約約款第21条)と説明しています。そのうえで、施設設置負担金はNTTが電話加入権の財産としての値打ちを保証しているものではないものの、「社会実態としては、電話加入権の取引市場が形成されています」と書き、質権を設定できることにも触れていました。
ウィキペディアの「電話加入権」の項目(2025年11月29日版)は、もともと電話加入権には質権を設定できなかったが、中小企業などからの要望で「電話加入権質に関する臨時特例法」ができ、条件付きで質権を設定できるようになったこと、そのため借入金の担保や差し押さえの対象になったことを書いています。マルフクの看板の「電話の金融」は、この特例の上に成り立っていた商売です。
お知らせによれば、負担金の見直しの背景には総務省の情報通信審議会の答申があり、そこでは施設設置負担金について「既に本来の意義を失い、新規加入の妨げとなり得る」として、廃止も選択肢とした見直しを求める考え方が示されていました。固定電話の契約数が減り、前払いの形で設備のお金を集める意味が薄れた、という説明です。
| 時期 | 電話加入権の側で起きたこと | マルフクの側で起きたこと(ウィキペディア) |
|---|---|---|
| 2002年 | ― | 5月に営業の大部分を譲り、全国174の営業所をほぼ閉鎖・売却 |
| 2004年12月 | NTT東日本が負担金の見直しを告知 | ― |
| 2005年3月 | 負担金が72,000円から36,000円に | (12月に貸金業の部門を別会社へ) |
| 2006年 | 5月、加入料の値下げで資産の値打ちが不当に下がったとして、25都道府県の37社と個人69人がNTTと国を訴える(ウィキペディア「電話加入権」) | 12月に新規の融資の受付を停止 |
| 2009年 | ― | 1月に貸金業の登録を廃業 |
| 2023年 | 一部の報道で、電話加入権は実質的に値打ちがないとまで言われる(ウィキペディア「電話加入権」) | 5月に「株式会社ハルキ」に商号変更 |
NTT東日本のお知らせ(2004年12月・2005年2月)、ウィキペディア「電話加入権」(2025年11月29日版)、「マルフク (貸金業)」(2026年9月7日版)。
担保の値打ちが下がる流れと、会社が営業所を閉じ、新規の貸付けを止め、廃業していく流れが、同じ時期に並んでいます。看板に書かれた「電話の金融」という商売そのものが、今はもう成り立たない、ということです。
問い2:マルフクという会社はどうなったのか
会社の歩みは、ウィキペディアの「マルフク (貸金業)」の項目(2026年9月7日の版)に詳しくまとめられています。主な出来事を抜き出すと、次のとおりです。
| 時期 | 出来事(ウィキペディアの記載) |
|---|---|
| 1958年4月 | 「丸福電話店」として大阪府布施市(今の東大阪市)で創業 |
| 1975年8月 | 堺市に株式会社丸福を設立(のちのマルフクの設立日) |
| 1977年〜1993年 | 関東・東海・中国・九州・四国・東北・北海道へ進出。大阪府貝塚市に事務センター |
| 2002年5月 | 営業の大部分をディックファイナンスに譲り、全国174の営業所をほぼすべて閉鎖・売却。9月まで新規の融資を止める |
| 2005年12月 | 貸金業の部門を別会社に引き継ぐ |
| 2006年12月 | 新規の融資の受付を停止 |
| 2009年1月 | 貸金業の登録を廃業 |
| 2023年5月 | 「株式会社ハルキ」に商号を変更 |
ウィキペディア「マルフク (貸金業)」(2026年9月7日版、2026年10月6日閲覧)。
同じ項目は、マルフクの貸金業登録番号を「大阪府知事(1)第12529号」としたうえで、「現在は廃業し登録業者ではない」と書いています。当サイトが2026年10月6日に金融庁の検索で「マルフク」と「ハルキ」を引いた結果は、どちらも0件でした。今、マルフクという名前で貸金業の登録を受けている会社はありません。
広告についてもこの項目は、テレビCMや新聞広告のほか、全国で赤と白のブリキの看板やホーロー看板を出していたこと、廃業後も郊外の古い木造の建物やトタンの小屋に多く残っていること、その上にクレジットカード現金化の業者の看板が貼られている場合もあることを書いています。
名前がどれだけ知られていたか
ウィキペディアの同じ項目は、マルフクの広告について次のように書いています。名前を借りる側から見て、この知名度がどれほど使いやすいものかが分かります。
| 広告の種類 | ウィキペディアの記載 |
|---|---|
| テレビCM・新聞広告 | 森崎めぐみ、畑野ひろ子を起用したテレビCM、赤井英和を起用した新聞広告 |
| 番組の提供 | 1990年代、テレビ東京系の日曜午後9時台の枠を提供。そのため衆議院・参議院の投票日には選挙特番の提供にもなった。地方局のニュースや天気予報も提供 |
| 看板 | 全国に赤と白のブリキの看板やホーロー看板。広告は関連会社のジャックが担当 |
| 提携 | 1999年に三洋電機クレジット、2001年にニッシンと業務提携 |
ウィキペディア「マルフク (貸金業)」(2026年9月7日版)。
同じ項目は、マルフクの看板の宣伝効果に目を付けた聖書配布協力会が、マルフクの看板と並べて自分たちの看板を出す例があることも書いています。看板そのものが、それだけ人の目に入る場所に貼られていた、ということです。一方で、2026年3月のまとめには「マルフクが何か知らない世代もいる」という声も並んでいました。名前は覚えているが、何の会社だったかは知らない――闇金が名前を借りるには、ちょうどよい状態です。
看板が今も残っている理由
2026年3月6日に公開された X の投稿のまとめ(Togetter「田舎とかの謎の看板『マルフク』は何でいっぱいあるの?闇金なの?」)では、マルフクは住民に毎年5,000円の謝礼を払う代わりに看板を出してもらっていた、という投稿が紹介されていました。これは投稿者の説明で、当サイトは謝礼の額を会社の資料では確かめていません。ただ、看板が「会社の土地」ではなく「住民の家や小屋」に付いていたのなら、会社がなくなった後に誰も外さず、そのまま残るのは自然な流れです。
同じまとめには、「マルフク看板」の場所を1枚ずつ番号付きで紹介している非公式の bot の投稿も並んでいて、その番号は300を超えていました。今も各地で見つかり続けていることが分かります。そして、2009年に廃業した会社の看板が今も目に入るので、「この会社は何なのか」「闇金ではないか」と検索する人が出てくる。「マルフク ヤミ金」という検索の多くは、ここから来ていると考えられます。
当サイトのサーチコンソールでも、過去3か月に「マルフク ヤミ 金」という検索で当サイトが表示されたことが記録されています(2026年10月6日確認)。当サイトにはこれまでマルフクを扱った記事がなく、その検索に答えるページがありませんでした。この記事は、その問いに答えるために書いたものです。
問い3:看板の会社は「闇金」だったのか
闇金は、貸金業の登録を受けずにお金を貸す業者のことです。ウィキペディアの記載どおり、マルフクは大阪府知事の登録番号を持ち、2009年1月に廃業するまで登録業者として営業していました。テレビ番組の提供に名前を出し、全国に営業所を構えていた会社で、登録のない業者とは立場が違います。
ただし、登録業者だったことと、借りた人の負担が軽かったことは別の話です。ウィキペディアは、マルフクが2002年に再建をあきらめた背景として「上限金利規制強化や貸し倒れの増加」を挙げています。当時の消費者金融の金利は、今の上限(年20%)より高い水準で貸すことが認められていた時代でした。当サイトは、マルフクが実際に何%で貸していたかを示す資料には当たれていません。そのため、この記事では金利の数字は書きません。
| よくある思い込み | 確かめた結果 |
|---|---|
| 看板が残っているから、今も営業している | 2009年1月に貸金業を廃業(ウィキペディア)。金融庁の検索で「マルフク」0件(2026年10月6日) |
| 田舎の古い看板の金融業者だから闇金 | 大阪府知事の登録を受けていた登録業者。全国174の営業所を持っていた(ウィキペディア) |
| 電話番号に電話すれば借りられる | 会社の営業・実体は存在しないようだ、とウィキペディアは書く。今その番号につながる相手が誰かは、当サイトは確かめていない |
| 今「マルフク」を名乗って貸してくる相手は、あの会社 | 登録が0件なので、今マルフクを名乗って貸す相手は、登録のない別の相手(次の問い) |
問い4:今「マルフク」を名乗るのは誰か
闇金の情報を集めているサイト2つに、「マルフク」を名乗る闇金の記録がありました。
| 項目 | 先払い買取-0円被害相談マニュアル(yamikinsoudan.net) | 闇金詐欺対策窓口(yamikinsagi.blog.jp) |
|---|---|---|
| 名乗っていた名前 | マルフク | マルフク |
| 掲げていた登録番号 | 東京都(2)第31262号 | 東京都(2)第31262号(「偽っている貸金業番号」として掲載) |
| 所在地 | 東京都千代田区外神田6-8-1 UYビル5 | 東京都千代田区外神田6-8-1 UYビル5 |
| 連絡先 | 空欄 | 080で始まる携帯の番号と、03で始まる番号。yahoo.co.jp のメールアドレス |
| 担当者 | 空欄 | 「白井(男性)」 |
| 手口 | 携帯電話を買わせる、逆ギレしてくる。融資は行っていない | 携帯買取詐欺 |
各サイトの公開ページ(2026年10月6日閲覧)。掲載日はどちらのページにも書かれていない。
2つの記録は、名前・番号・住所が一致しています。当サイトが10月5日に取り出した東京都に所在する登録業者の一覧(632件)には、第31262号の業者はありませんでした。外神田に所在する登録業者は5社ありますが、6-8-1 の業者はありません。
外神田に所在する5社の中には、外神田三丁目12番8号の新生フィナンシャル(関東財務局長(11)第01024号)や新生パーソナルローン、外神田四丁目の菱信ディーシーカードといった大手の登録業者が入っています。千代田区外神田という町名は、正規の大手の住所として目にすることがある地名です。町名だけを見て「ちゃんとした場所だ」と受け取らず、番地とビル名まで、登録の一覧と照らす必要があります。マルフクを名乗った相手の「6-8-1 UYビル5」は、その照合で引っかかる住所でした。
手口は「携帯電話を買わせる」というものです。お金を貸すと言って近づき、融資の代わりに携帯電話を契約させる、というものです。yamikinsoudan.net の記録が「融資はおこなっておらず」と書いているとおり、お金を借りるつもりで連絡した人が、携帯電話の契約と端末の代金だけを負わされる形です。
闇金詐欺対策窓口の記録では、担当者の名前が「白井」でした。ウィキペディアによれば、マルフクの前身「丸福電話店」を創業したのは白井辰巳氏です。名前を借りた相手が、昔の会社の創業者と同じ名字を名乗っていたことになります。偶然か、昔の会社を知っている人を信用させるためかは、記録からは分かりません。
なぜ古い名前を使うのか
闇金が実在の会社や昔の有名な会社の名前を使うのは、検索した時に「本物らしく」見えるからです。マルフクの場合、全国の看板とテレビCMで名前を知っている人が多く、「昔からある会社」と受け取られやすい名前でした。さらに、正規の会社がすでに廃業しているので、本物の会社から「当社とは関係ありません」と注意が出ることもありません。看板の会社が消え、名前だけが残っている状態は、名前を借りる側にとって都合のよい形です。
当サイトのポケマネの記事でも、実在する登録業者の番号と郵便番号を掲げていたサイトを確かめました。マルフクを名乗った相手は、実在の会社の番号ではなく、今の東京都の登録一覧にない番号を使っていた点が違います。名前・番号・住所のどれか1つだけで判断せず、3つを登録と照らすことが大事です。
看板の会社と、名前を借りた相手を並べる
| 項目 | 看板の会社(株式会社マルフク) | マルフクを名乗る闇金(情報サイトの記録) |
|---|---|---|
| 事業 | 電話加入権を担保にした貸付け・電話のレンタル | 融資をうたって携帯電話を買わせる |
| 登録 | 大阪府知事(1)第12529号(2009年1月に廃業) | 東京都(2)第31262号と掲げるが、今の東京都の登録一覧にない |
| 拠点 | 大阪府堺市・岸和田市、東京都中央区など。最大で全国174の営業所 | 東京都千代田区外神田6-8-1(登録業者の所在地にない) |
| 今 | 2023年5月に「株式会社ハルキ」に商号変更。貸金業はしていない | 掲載日不明。今も同じ番号で動いているかは不明 |
「マルフク」を名乗る相手から連絡が来た時
まだ何もしていない人
- 相手が掲げる登録番号を、金融庁の登録業者の検索に入れる。「マルフク」は2026年10月6日の時点で0件
- 「携帯電話を契約して送ってほしい」「審査のために端末が要る」と言われたら、その時点でやり取りをやめる
- 看板に書かれた古い電話番号に連絡しない。2009年に廃業した会社の番号を、今誰が使っているかは分からない
すでに携帯電話を契約した、または送ってしまった人
- 契約した携帯電話会社・契約日・端末の機種・送った先の住所を書き出す
- 相手とのやり取り(電話の着信、メール、メッセージ)を消さずに残す
- この先どう動くかは、こちらのページで順番を確かめる
今も営業している業者の中から条件を見比べたい人は、当サイトのソフト闇金ランキングで、名前と条件を並べて確かめることもできます。
まとめ 看板の「マルフク」は、電話加入権を担保にお金を貸していた登録業者で、2002年に全国174の営業所をほぼ閉じ、2009年1月に貸金業を廃業しました(ウィキペディア)。電話加入権の土台だったNTTの施設設置負担金は、2005年3月に72,000円から36,000円へ半額になっています。2026年10月6日の金融庁の検索で「マルフク」は0件で、今マルフクの名前で貸す登録業者はありません。一方で、マルフクを名乗り「東京都(2)第31262号」と外神田の住所を掲げて携帯電話を買わせる闇金の記録が、情報サイト2つに残っています。看板の会社と、名前を借りた相手は別物です。
出典:ウィキペディア「マルフク (貸金業)」(2026年9月7日版)、NTT東日本「施設設置負担金の見直しにかかる契約約款の届出について」(2005年2月10日)と2004年12月のお知らせ、金融庁 登録貸金業者情報の検索(2026年10月6日)と東京都に所在する登録業者の一覧(10月5日取得)、Togetter(2026年3月6日公開)、yamikinsoudan.net、yamikinsagi.blog.jp の記録。
