ソフト闇金メビウスは長崎県警が摘発|延べ2万人に9億円を貸して5億円の利益、最後は客に口座を売らせていた——報道の数字を計算し直す

✅在籍確認なし・秘密厳守
↓

ソフト闇金「メビウス」は、2020年8月から2021年にかけて長崎県警が運営グループを摘発し、首謀者ら5人を逮捕、13人を書類送検した業者です。長崎新聞の報道によれば、2016年8月から2019年12月までに全国の延べ約2万人に約9億円を貸し付け、約5億円の不当な利益を得ていました。この記事では、4本の報道に出てくる数字を、借りた人の側から計算し直します。すると、「ソフト」と呼ばれた業者が、最後には客に自分の銀行口座を売らせていたという構図が見えてきます。

この記事の旧版は、事件の概要に加えて、相談窓口の案内や一般的な手口の説明を多く含んでいました。今回、それらを削り、長崎新聞の4本の報道(2020年8月29日、2021年1月14日、2021年3月22日の2本)と、事件を扱った法務事務所の公開記録に書かれていることだけで書き直しています。

事件の数字を並べる

まず、報道に出てくる主な数字を一つの表にまとめます。

項目 報道の数字 出どころ
営業の期間 2016年8月〜2019年12月(約3年半) 長崎新聞 2021年3月22日
貸し付けた相手 全国の延べ約2万人 同上
貸し付けた総額 約9億円 同上
不当な利益 約5億円 同上
拠点 福岡市 同上
摘発された人数 18人(5人逮捕、13人書類送検)。うち9人はもともと客 同上
押収したキャッシュカード 約450枚(ほとんどが買い取った口座) 同上
口座の売買などで犯罪に加担した客 少なくとも400人以上 同上

約9億円を貸して約5億円の利益を得たということは、貸したお金の半分以上が、利息や手数料として戻ってきていたことになります。延べ2万人で割ると、1人あたりの貸付は平均4万5,000円ほど、1人あたりから得た利益は2万5,000円ほどです。報道は、グループが10万円未満の少額の融資を中心にしていたと伝えており、この計算とも合います。連絡の手段はLINEかメールで、客と顔を合わせることはほとんど無かったとも報じられています。

逮捕容疑の数字を、年率に直す

報道には、具体的な逮捕容疑の金額も出ています。2回の逮捕の容疑を、借りた人の側から計算し直しました。

項目 2020年8月28日の逮捕(4人) 2021年1月13日の逮捕(首謀者とみられる男)
対象の期間 2019年10月17日〜31日 2019年5月31日〜11月29日
借りた人 福岡県内の男女3人 長崎市の男性会社員(27)ら男女2人
受け取った利息 計5万1,000円(法定利息は計約3,300円) 計18万7,000円(法定利息は計1万1,106円)
法定利息との比 約15倍 約17倍(報道は「法定金利の最大約20倍」)
報道された金利 1日あたり2.85〜5.45% 貸付額は計20万9,000円

最初の逮捕で報じられた「1日あたり2.85〜5.45%」を年率に直すと、約1,040%から約1,989%になります。出資法は、業として貸す場合に年20%を超える利息を刑事罰の対象とし、1日あたり0.3%(年109.5%)を超えるとさらに重い罰則を定めています。メビウスの金利は、その重い罰則の線のさらに10〜18倍でした。

2回目の逮捕の容疑では、20万9,000円を貸して18万7,000円の利息を受け取っています。利息だけで、貸したお金の約9割にあたる額を半年のうちに受け取っていた計算です。事件を扱った法務事務所は、ブログで「年利2000%近く」の容疑であり、中には5000%を超える取引もあった可能性があると書いています。

メビウスが掲げていた「7日で2割、10日で3割」

事件の前、メビウスは自社のホームページ(mevius-web.com)で料金を示していました。事件を扱ったしもひがし法務事務所は、2017年12月に公開した情報ページ(2024年8月更新)で、その中身を次のように記録しています。ホームページの表示は「7日間で2割、10日間で3割」の利息。ただし実際には、手数料3,000円と利息が先に差し引かれて振り込まれる。連絡には「坂口」「山口」といった名前のLINEアカウントなどが使われていた、というものです。

この条件で、実際に手元に届く額と、払う額を計算し直しました。手数料も利息とみなし、先に差し引かれた分は元本に含めない、という数え方です。

申し込む枠と期間 先に引かれる額 手元に届く額 払う利息・手数料 届いた額に対する割合
2万円・10日(3割) 9,000円 11,000円 9,000円 約82%
1万円・10日(3割) 6,000円 4,000円 6,000円 150%
1万円・7日(2割) 5,000円 5,000円 5,000円 100%

※先に引かれる額=枠に対する利息(2割または3割)+手数料3,000円。返すのは枠の全額。当サイトの計算。

1万円の枠を10日で借りると、手元に届くのは4,000円で、10日後に1万円を返します。届いた額の1.5倍を、10日で上乗せして払う計算です。定額の手数料3,000円は、借りる額が小さいほど重くのしかかります。「7日で2割」という看板の数字は、少額を借りる人ほど実態からかけ離れていました。

看板の料金と、逮捕容疑の金利が一致する

ここで、2020年8月の逮捕で報じられた「1日あたり最大5.45%」という金利を思い出してください。2万円・10日の例では、届いた1万1,000円に対して9,000円を払うので、割合は約81.8%です。期間が15日に満たない貸付は15日として数えるという決まりに沿って、これを15日で割ると、1日あたり約5.45%になります。

ホームページに掲げた料金に手数料を足して数え直すと、警察が逮捕容疑として示した金利の上限と、ほぼぴったり重なるということです。看板の「10日で3割」は、それだけ見れば他の闇金より安く見えます。しかし、手数料と先引きを含めて数えた瞬間に、それは違法な金利の上限そのものになっていました。

借りた人の側から見た、メビウスとの付き合い

長崎新聞は、メビウスから借りていた長崎市の20代の男性に取材しています。その証言を、借りた人の側の時間の流れに沿って並べ直します。

段階 男性が語ったこと(報道の要旨)
入口 ギャンブルで借金が膨らみ、消費者金融から計約100万円を借りて追加の融資を断られた。ネットでヤミ金を探し、手当たり次第に申し込むうち、メビウスを見つけた
審査 氏名や生年月日などをLINEで送ると、あっさり「審査」に通った。最初に電話で男から説明があっただけで、対面のやり取りは無い
最初の借入 2万円ほど。その後、毎月3万〜5万円ほどを借りるようになった
受け取る額 2万円借りても、「手数料」と利息が差し引かれて1万数千円しか渡されない
遅れたとき 1日の延滞でも元金の1割が加算され、連絡を忘れると罰金を科された。「返済が滞れば個人情報をばらまく」という脅し文句も送られてきた
勧誘 月初めには決まって「メビウスです。融資可能ですので、いつでも連絡ください」とLINEが届いた
口座の買い取り 「口座の買い取りも行っています」と書かれ、ゆうちょ銀行やメガバンクは十数万円、地方銀行なら数万円という「買い取り表」を示された。調べて犯罪だと分かり、応じなかった
終わり 2019年12月、返済日に連絡しても応答が無くなった。約1か月後、県警の捜査員から「メビウスと取引があった人に話を聞いています」と電話があった

男性は、返済のたびに指定される振込口座が毎回違ったことから、売買された口座が使われていると「うすうす気付いていた」と振り返っています。

「2万円借りて1万数千円」を計算する

証言の「2万円借りても1万数千円しか渡されない」を、仮に手元に1万5,000円が届いたとして考えます。この場合、返すのは2万円で、手元に来た額との差の5,000円が、実際に払う利息と手数料です。受け取った額に対して33%です。これを例えば10日で返すなら、年率に直すと1,200%を超えます。これは報道された金利の範囲(年約1,040〜1,989%)とも重なります。

加えて、1日遅れただけで元金の1割が加算される、というルールがありました。2万円なら、1日で2,000円です。3日遅れれば6,000円、1週間なら1万4,000円になり、借りた額の7割に届きます。「遅れても取り立ては穏やか」な代わりに、遅れた分はそのまま次の返済額に上乗せされる。取り立ての言葉が柔らかいことと、負担が軽いことは、まったく別の話でした。

「ソフト」の行き着いた先は、口座の売買

メビウス事件でいちばん重いのは、借りた人が被害者であるだけでなく、犯罪の加担者にされていったことです。長崎新聞は次のように伝えています。

返済が滞った顧客は「返せなければ口座を売れ」と迫られた。県警は犯行に使用された口座のキャッシュカード約450枚を押収。これらはほとんどが買い取った口座で、少なくとも400人以上の顧客が犯罪に加担したとみている。(長崎新聞 2021年3月22日)

摘発された18人のうち9人は、もともとメビウスの客でした。グループに銀行口座を提供したとして、犯罪収益移転防止法違反などの疑いで書類送検されています。借金を返すために口座を渡した人が、そのまま捜査の対象になったということです。

摘発された18人の半分が、もとは客だったという数字は重く受け止めるべきです。お金を借りに来た人が、数か月から数年のうちに、グループの側の人間として名前が挙がる。最初は「借りる側」だった人が、気づけば「使われる側」に回っているのが、この事件の構図でした。押収されたキャッシュカードの約450枚という数は、そうした人の数を物語っています。1枚ごとに、口座を差し出した誰かがいたことになります。

グループは、買い取った口座をいくつも使い分け、一つが凍結されても別の口座で返済を受けることで、発覚しにくくしていたと報じられています。借りた人から見れば「振込先が毎回違う」という形で、その仕組みが表に出ていました。

借りた人に起きること その結果
返済のために口座を売る その口座は犯罪の資金の受け皿として使われる。売った本人も罪に問われうる
売った口座が凍結される 同じ名義で新しい口座を作りにくくなるおそれがある
口座を売っても借金は残る 十数万円で口座を手放しても、メビウスへの返済は続く

「買い取り表」で示された十数万円という額は、返済に困っている人には大金に見えます。しかし、口座を売ることは、借金を減らす手段ではなく、自分を加害の側に移してしまう行為です。どんな名目でも、通帳やキャッシュカード、ネットバンキングの情報を他人に渡してはいけません。

メビウス自身が書いていたこと

長崎新聞によれば、メビウスのホームページには次のような書き込みが残されていました。

「金利は違法ですが、最後の融資先としてがんばっております」

違法であることを自分で認めたうえで、「最後の融資先」と名乗る。捜査関係者は、グループが「必要悪」として犯行を正当化していたと語っています。客の中には、年収による借入の制限などでほかから融資を断られ、被害の意識が薄い人もいたといいます。

取材に応じた男性も、「どこからも借りられず当座をしのぐことができたのも事実」「助かった側面もある」と複雑な気持ちを明かしています。一方で、「もしグループが捕まらなかったら、今も違法な金利をずるずると返しながら、借金を繰り返していたかもしれない。違法には変わりはなく、借りるべきではないと今なら強く思える」とも語っています。

「最後の融資先」という言葉は、ほかで断られた人の心に届きやすい言葉です。しかし、メビウスの数字が示しているのは、最後の頼みの綱ではなく、貸したお金の半分以上を利益として回収し、返せなくなった人には口座を差し出させる仕組みでした。

サイバーパトロールで見つかった、初めての例

2020年8月29日の報道によれば、長崎県警の諫早署は2017年2月、サイバーパトロールで「ソフト闇金メビウス」のサイトを見つけ、銀行口座などを割り出していきました。県警がサイバー捜査でヤミ金グループを摘発したのは、これが初めてだったと報じられています。

事件を扱った法務事務所は、これまでのヤミ金の摘発は、被害者からの具体的な相談をきっかけにすることが多かったのに対し、この事件ではサイバーパトロールが逮捕に結びついた点が注目される、と書いています。ネットだけで完結する業者でも、サイトや口座の動きから、警察は時間をかけて追っていたことになります。2017年2月の発見から2020年8月の最初の逮捕まで、約3年半かかっています。その間もサイトは営業を続け、2019年12月まで貸付が行われていました。見つかっていることと、すぐに止まることは同じではありません。「まだ営業しているから大丈夫」という判断は、ここでも成り立たないということです。

長崎新聞は、2006年の貸金業法の改正で上限金利が引き下げられ、ヤミ金への罰則も強まったことで、ヤミ金業者が暴力的な取り立てを控え、ネットに場所を移したという背景も伝えています。メビウスは、その「ネットに移ったヤミ金」の代表的な例でした。同じように「ソフト」を名乗り、2018年に摘発されたアバロンの事件とも、手口はよく似ています。 → ソフト闇金アバロンの逮捕と、報道の数字の中身

アバロンとメビウスを並べると見えること

「ソフト」を名乗って摘発された二つの業者、2018年のアバロンと、2020〜2021年のメビウスを、報道の数字で並べてみます。

比べる点 アバロン(2018年摘発) メビウス(2020〜2021年摘発)
摘発した警察 神奈川・岐阜両県警の合同捜査本部 長崎県警
拠点として報じられた場所 東京都内 福岡市
客の規模 延べ約2,000人(2008年ごろから) 延べ約2万人(2016年8月〜2019年12月)
利益 2018年1〜7月で約1億6,000万円 約3年半で約5億円
払えないときの扱い 返済の猶予を与え、払えない利息分を再び貸し付ける ペナルティーを科したうえで、さらに融資してつなぎとめる
行き着いた先 利息が借りた額を上回る 客に口座を売らせ、400人以上を犯罪に加担させる

二つに共通するのは、強く取り立てない代わりに、払えない客にさらに貸して関係を長引かせることです。客は逃げずに払い続け、業者は少額の貸付を何度も繰り返させて利益を積み上げます。違いは、メビウスがその先で、客の銀行口座まで自分たちの道具にしたことでした。規模も、客の数で見るとメビウスはアバロンの約10倍にあたります。

メビウスは摘発前、ネットの掲示板で「闇金大手」として、ほかのソフト闇金の名前と並べて語られていました。名前が知られていること、長く営業していること、口コミが多いことは、どれも安全の証明にはなりません。知名度は、それだけ多くの人から利息を取ってきたことの表れでもあります。

今「メビウス」の名前を見かけたら

運営グループが摘発された以上、当時のメビウスがそのまま営業を続けているとは考えにくい状況です。それでも、この名前が検索や広告、LINEのメッセージに出てくるなら、同じ名前を借りた別の業者か、古い紹介記事が残っているだけだと考えるべきです。

1.登録番号を聞き、金融庁の検索で引く

メビウスは貸金業の登録を持たずに営業していました。今その名前を名乗る相手が番号を示せない、あるいは検索して出てこないなら、当時と同じ無登録の相手です。

2.「口座の買い取り」という言葉が出たら、その場で関係を断つ

口座の売買は、それだけで犯罪です。返済の代わりに口座を求められたら、相手が誰であれ応じないでください。

3.振込先が毎回違うなら、記録を残す

返済先の口座名義が毎回変わるのは、売買された口座が使われているしるしです。振込の明細とLINEのやり取りを保存しておきます。

すでに借りてしまった、口座を求められている、という場合の動き方は、次のページにまとめています。 → ソフト闇金より先に確かめること

メビウスが客から買い取った口座は、いずれ止められる「振込先」として使われました。口座を止めて預金の権利を消す法律の流れと、令和7年度に手続に入った口座の数は、別の記事で整理しています。→ 口座を売った人・返済した人の立場の違いと、止められた口座の数

まとめ:メビウスは、延べ約2万人に約9億円を貸して約5億円の利益を得ていた、無登録のソフト闇金です。逮捕容疑の金利は1日2.85〜5.45%で、年率にすると1,000〜2,000%に近い水準でした。取り立ては穏やかでも、1日の遅れで元金の1割が加算され、返せなくなった客には口座の売買を迫り、少なくとも400人以上を犯罪に加担させていました。「最後の融資先」という言葉に、自分の口座まで差し出す価値はありません。同じ名前や同じ料金の看板を見かけたら、この数字を思い出してください。

出典:長崎新聞 2020年8月29日「「ソフトヤミ金」グループ4人逮捕 長崎県警 サイバー捜査初摘発」(しもひがし法務事務所のブログに引用された本文で確認)/長崎新聞 2021年1月14日「ソフトヤミ金 首謀か 会社役員を逮捕 出資法違反容疑 長崎県警」/長崎新聞 2021年3月22日「「返せなければ口座売れ」 400人超の顧客、犯罪に加担 長崎県警がソフトヤミ金摘発」・「「返済滞れば個人情報ばらまく」 脅しと加算金で取り立て ソフトヤミ金被害者証言 長崎」/しもひがし法務事務所 闇金情報ブログ。計算は報道の数字から当サイトが行ったもの。