ソフト闇金と口座凍結|返済した口座・業者の口座・売った口座の違いと、令和7年度に止められた7万4,478口座

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「ソフト闇金と取引すると口座が凍結される」と聞いて不安になっている人へ。口座の話は、3つに分けて考える必要があります。業者が返済を受け取る口座、自分が借りたお金を受け取り返済に使った口座、そして業者に売ったり渡したりした自分の口座です。法律が取引の停止と権利の消滅を定めているのは、主に1つ目と3つ目です。

この記事は、振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)と犯罪収益移転防止法の条文、金融庁のQ&A、預金保険機構が公表した令和7年度の公告の実績を読み、当サイトがこれまで調べたソフト闇金の公式サイトや法務事務所の記録と突き合わせたものです。令和7年度に権利の消滅手続が始まった口座は7万4,478件ありました。業者が客に「現金で振り込んで」と勧めていた理由も、条文から読み解けます。

業者自身が、口座について書いていたこと

当サイトで調べた業者のサイトや記録には、口座の扱いについて具体的に書かれたものがありました。

業者・記録 口座について書かれていたこと
ラビットキャッシュの公式サイト(返済方法のページ、2025年9月14日の保存記録) 返済は「なるべく現金振り込み」。理由は、業者の口座が「銀行から警察へ犯罪で利用されていると通報された場合」、振り込んだ客の口座も巻き込まれるおそれがあるから。さらに「あまり1店舗の銀行で振込みを行いすぎると銀行員から声を掛けられる可能性」があるので、複数の店舗を探すよう求めていた
ソフト闇金メビウス(長崎県警が摘発、報道) 返せなくなった客に、自分の銀行口座を売らせていた
良心金融(しもひがし法務事務所の記録、2026年5月更新) 「返済の代わりに口座を開設して渡すように」と指示するケースが確認されている、と記載
マネーサポート 芹沢(同事務所の記録、2026年5月31日) 返済に行き詰まると、口座の売却や闇金の客集めといった「闇バイト」を勧められる、と記載

法務事務所の側も、口座の話に触れていました。良心金融の記録は、口座を渡すよう指示されるケースに続けて、取引が長く続くほど「銀行口座の凍結などの思わぬトラブルに巻き込まれる危険性も高まります」と書いています。一方のラビットキャッシュは、「お客様の口座から振り込まれても構わないのですが」と前置きしたうえで、現金での振込みを求めていました。業者も相談を受ける側も、口座の凍結を前提に話をしている点は同じです。違うのは、業者がそれを客の記録を消す方向へ使っていたことです。

業者が気にしていたのは、自分たちが使う口座が止められることでした。そして返せなくなった客には、新しい口座を用意させて差し出させます。口座が止められる側の事情を、業者はよく知っていたことになります。→ ラビットキャッシュの返済方法のページ

口座を止めて、権利を消す法律の流れ

振り込め詐欺救済法は、名前に「振り込め詐欺」とありますが、対象は詐欺だけではありません。金融庁のQ&Aは、対象になる犯罪行為として、オレオレ詐欺や架空請求詐欺などのほかに「ヤミ金融」を挙げ、預金口座への振込みが使われた場合が当たると書いています。

段階 条文に書かれていること
対象になる口座(第2条第4項) 「犯罪利用預金口座等」=①振込みを使った犯罪で、振込先になった口座、②専ら①の口座のお金を移すために使われ、中身が①への振込みと実質的に同じだと認められる口座
取引の停止(第3条) 金融機関は、捜査機関などからの情報提供その他の事情から、犯罪に使われた口座である疑いがあると認めるときは、取引の停止などの措置を講ずる。お金を移す先になった疑いのある他の金融機関の口座があれば、その金融機関に情報を伝える
公告の求め(第4条) 犯罪に使われたと「疑うに足りる相当な理由」があると認めるときは、預金保険機構に、その口座の預金の権利を消す手続を始める公告を求めなければならない
公告(第5条) 預金保険機構が、金融機関名・店舗・口座番号・名義人・金額などを公告する。名義人が権利を主張できる期間は、公告の翌日から60日以上
権利の消滅と分配(第2条第5項・第8条) 期間内に届出などがなければ預金の権利は消滅し、その残高をもとに、被害を受けた人に「被害回復分配金」が支払われる。残高が1,000円未満なら支払いは行われない

e-Gov 法令検索「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」(2026年10月12日閲覧)/金融庁「振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ」。

名義人が60日のうちに名乗り出なければ、口座の預金は名義人のものではなくなります。業者の受取口座は、多くが他人名義や売られた口座なので、名乗り出る名義人はまずいません。そうして残った残高が、その口座に振り込んだ人たちに分けられる仕組みです。

令和7年度に、どれだけの口座が止められたか

預金保険機構は、この法律にもとづく公告の実施状況を毎年公表しています。令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の主な数字です。これはヤミ金融だけでなく、振込みを使った犯罪全体の数字です。

公告の種類 口座数 金額 前の年度(令和6年度)
権利の消滅手続を始めた公告 74,478件 約147億1,135万円 59,644件・約107億7,800万円
うち残高1,000円未満で分配しない旨の公告 32,869件 約1,500万円 28,045件・約1,200万円
分配金の支払手続を始めた公告 34,522件 約89億9,353万円 28,771件・約77億4,600万円
支払手続を終えた公告(消滅した預金の総額) — 約73億5,546万円 約56億300万円
うち被害者に支払われた額 — 約60億2,960万円(支払率82.0%) 約49億1,100万円

預金保険機構「令和7年度に実施した主要3公告について」(2026年10月12日閲覧)。金額は公表値を万円単位で丸めた。

権利の消滅手続に入った口座は1年で7万4,478件、前の年より約1万5,000件増えていました。そのうち3万2,869件、およそ44%は残高が1,000円未満で、分ける元手がほとんど残っていない口座です。止められる前に、お金はすでに別の口座へ移されていたと読めます。

この数字は、ソフト闇金の業者が「口座は止められるもの」と考えて動いている理由を裏づけます。口座はいずれ止まる消耗品で、止まる前に中身を移し、次の口座を用意する。返せなくなった客に口座を差し出させるのは、その「次の口座」を集める手段でもあります。

1年24回の公告を並べると

権利の消滅手続を始める公告は、令和7年度に24回、ほぼ月2回のペースで出ていました。1回あたりの口座数は平均で約3,100件です。いちばん多かったのは2025年11月4日の回で3,905件、いちばん少なかったのは2026年1月5日の回で2,263件でした。どの回も2,000件を下回っていません。半月ごとに、全国のどこかで3,000ほどの口座が止められ、名義人の権利を消す手続に入っている計算です。

数えたもの 数字
1回の公告あたりの口座数(24回の平均) 約3,103件
最も多かった回(2025年11月4日) 3,905件
最も少なかった回(2026年1月5日) 2,263件
全口座の平均残高(約147億円 ÷ 74,478件) 約19万7,500円
残高1,000円以上の口座41,609件の平均残高 約35万3,000円
残高1,000円未満の口座32,869件の平均残高 約456円

預金保険機構「令和7年度に実施した主要3公告について」表2の各回の数字から当サイトが計算。

口座は二つに分かれていました。まとまったお金が残ったまま止められた口座と、ほとんど空になってから止められた口座です。後者が4割を超えるということは、止められるまでの間に、中身が次々と別の口座へ移されていたということです。業者が客の口座を集めたがるのは、この「移し先」がいくらあっても足りないからです。残高が1,000円未満の口座は被害者に分けられず、預金保険機構に納付されます。そこに振り込んだ人には、1円も戻りません。

「客の口座も凍結される」という業者の説明を、条文で読む

ラビットキャッシュは、業者の口座が通報されると、振り込んだ客の口座も巻き込まれるおそれがある、と書いていました。条文の定義に当てはめると、話はそう単純ではありません。

法律が「犯罪利用預金口座等」としているのは、犯罪の振込先になった口座と、そのお金を移すためだけに使われた口座です。ヤミ金に返済した人の口座は、振込先ではなく振込元です。そして金融庁のQ&Aによれば、ヤミ金融への振込みは救済の対象で、振り込んだ人は分配金を受け取る「被害者」の側に立ちます。分配金の申請には、対象の被害者であることを示す資料として振込明細書などを添えると書かれていました。

もちろん、金融機関が個々の取引をどう判断するかは、外からは分かりません。条文だけで「返済した側の口座は絶対に止まらない」とは言えません。ただ、業者が「凍結が怖いから現金で、店を変えて」と勧めたのは、客の口座を守るためというより、振込の記録が一か所にまとまらないようにするためだと考える方が筋が通ります。返済の記録が散らばれば、業者の口座に誰がいくら振り込んだのかをたどるのが難しくなります。客が自分を被害者として名乗り出るための材料も、手元から消えていきます。

返済の振込明細やATMの控えは、捨てずに残してください。業者の口座が止められ、権利の消滅手続に入った場合、その口座の残高から被害を受けた人に分配金が支払われます。金融庁のQ&Aは、申請には振込明細書などの資料を添えるとし、なくした場合でも振込の内容を金融機関に十分説明すれば申請はできるとしています。ただし申請期間は公告の翌日から30日以上で、過ぎると受け取れません。

業者の口座が止められてから、分配金が届くまで

順番 起きること 期間・条件
1 金融機関が業者の受取口座の取引を止める 捜査機関からの情報などで、犯罪に使われた疑いがあると認めた時
2 預金保険機構が、権利の消滅手続を始める公告を出す 口座番号・名義人・残高などが載る。名義人が名乗り出る期間は60日以上
3 名乗り出がなければ預金の権利が消え、分配金の支払手続を始める公告が出る 預金保険機構は申請のために90日の期間を設けている(法律の下限は30日以上)
4 振り込んだ人が、振込先の金融機関に申請する 振込明細などを添える。なくした場合は振込の内容を十分に説明
5 金融機関が審査して分配金を支払う 申請額の合計が残高を超えれば、残高を被害額で按分。金融庁によれば、支払いまで少なくとも半年以上かかるのが一般的

振り込め詐欺救済法の条文、預金保険機構「令和7年度に実施した主要3公告について」、金融庁「振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ」から当サイトが整理。

令和7年度に支払手続を終えた口座では、消えた預金約73億5,546万円のうち約60億2,960万円が被害者に支払われ、支払率は82.0%でした。言い換えると、申請した人に分けられたのは口座に残っていたお金の範囲だけで、振り込んだ全額が戻るとは限りません。それでも、止められた口座にまとまった残高があれば、振込の記録を持っている人には取り戻せる可能性が残ります。記録を散らしたり捨てたりすれば、その可能性まで手放すことになります。

自分の口座を「売る」「渡す」と、立場が逆になる

口座の話で、いちばん取り返しがつかないのは3つ目、業者に自分の口座を渡すことです。犯罪収益移転防止法の第26条は、他人になりすまして使う目的を知りながら預金通帳やキャッシュカード、振込みに必要な情報を渡した人、また正当な理由なくお金をもらってそれらを渡した人を、「三年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金」の対象にしています。そうするよう人を誘った人も、同じ罪です。

口座 止められる・消される仕組み 持ち主の立場
業者が返済を受け取る口座 犯罪の振込先として取引停止、公告、権利の消滅、分配 名義人は多くが他人。名乗り出る人はまずいない
自分が借入れを受け、返済に使った口座 条文の定義では、振込先にも資金移転用の口座にも当たりにくい ヤミ金融への振込みは救済の対象。振り込んだ人は被害者として分配金を申請できる
業者に売った・渡した自分の口座 業者が返済の受け取りに使えば、その口座が犯罪の振込先になる 渡した本人が犯罪収益移転防止法第26条の罪に問われうる。口座は止まり、残高の権利も消える

e-Gov 法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律」第26条(2026年10月12日閲覧)。

「返済の代わりに口座を」と言われた瞬間に、借りた人は被害者の側から、業者の道具を渡した側へ移されます。渡した口座は、ほかの客が業者に返済する振込先になり、いずれ止められます。その時、名義人として名前が公告に載るのは、口座を渡した本人です。メビウスの事件の報道で、口座を売らされた客の話が繰り返し出てくるのは、この仕組みのためです。→ メビウスの報道の数字と、客に口座を売らせていた経緯

メビウス事件で集められた口座

当サイトがメビウスの事件を報道の記録で調べた際、口座について次のことが伝えられていました。

報道で伝えられたこと 中身
押収されたキャッシュカード 約450枚。ほとんどが客から買い取った口座のもの
口座の売買などで犯罪に加担した客 少なくとも400人以上(県警の見方)
摘発された18人のうち、もともと客だった人 9人。グループに銀行口座を提供したとして、犯罪収益移転防止法違反などの疑いで書類送検
客に示された「買い取り表」 ゆうちょ銀行やメガバンクは十数万円、地方銀行なら数万円
借りていた男性の証言 返済のたびに指定される振込口座が毎回違ったので、売買された口座が使われていると「うすうす気付いていた」

口座1つに十数万円の値が付くのは、それだけ業者にとって口座が必要だからです。客が返す数万円の借金と、口座の買い取り値が釣り合うように見せて、借金の代わりに口座を差し出させる。そうして集めた口座に、ほかの客が返済を振り込み、口座が止められれば次の口座に替える。返済先が毎回違ったという証言は、上の公告の数字と同じ動きを、借りる側から見たものです。

今、手元でできること

1. 返済の記録を一か所にまとめる

振込明細、ATMの控え、ネットバンキングの振込履歴の画面を、日付順にまとめます。振込先の金融機関名・支店・口座番号・名義も書き写しておきます。現金で振り込んだ控えも同じです。

2. 振り込んだ先の口座が公告されていないか確かめる

金融庁のQ&Aは、振込先の口座について公告が出ていれば、預金保険機構の「振り込め詐欺救済法に基づく公告」のウェブサイトで、残高や分配金の申請期間を見られるとしています。控えに書かれた口座番号で探せます。

3. 「口座を作って渡して」「通帳を送って」には応じない

返済を待つ、利息をまけるといった条件と引き換えでも、渡した時点で自分が罪に問われうる側に回ります。「借金がなくなる」という話でも同じです。

4. 業者から振り込まれたお金の出どころにも注意する

業者からの送金が、本人名義でない口座から来ることもあります。頼んでいないのに振り込まれたお金には手をつけず、日時と金額、送金元の名義を控えてください。

ソフト闇金の業者ごとに、返済先の口座がどう伝えられていたか、返済の段取りがどう書かれていたかは、当サイトのまとめから個別の記事でたどれます。振込先が毎回変わる業者ほど、記録を自分で残すことの意味は大きくなります。→ ソフト闇金の条件を一覧で比べる

まとめ

  • 振り込め詐欺救済法は、犯罪の振込先になった口座の取引を止め、60日以上の公告を経て預金の権利を消し、残高を被害を受けた人に分ける。金融庁はヤミ金融への振込みも対象と明記している
  • 令和7年度に権利の消滅手続が始まった口座は7万4,478件(前年度5万9,644件)。うち約44%の3万2,869件は残高1,000円未満
  • 返済した人の口座は条文上、振込先にも資金移転用の口座にも当たりにくく、振り込んだ人は分配金を申請できる側。業者が現金振込と複数店舗を勧めたのは、記録を散らすためと読める
  • 業者に口座を売る・渡すと、犯罪収益移転防止法第26条で三年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金の対象。渡した口座は止められ、名義人として公告に載る
  • 返済の控えは捨てずにまとめ、振込先の口座が公告されていないか確かめる

借りる前に確かめる順番と相談先は → ソフト闇金で借りる前に確かめること

確かめた資料:e-Gov 法令検索「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」第2条〜第5条・第8条、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」第26条(2026年10月12日)/金融庁「振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ」(Q&A)/預金保険機構「令和7年度に実施した主要3公告について」/当サイトの個別記事で検証したラビットキャッシュの公式サイトの保存記録、メビウス事件の報道、しもひがし法務事務所の記録(良心金融・マネーサポート 芹沢)