茨城の登録貸金業者は5社・個人0|「先払い買取」をヤミ金として全国で初めて摘発した茨城県警の事件と、見分け方【2026年9月】

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「先払い買取」を名乗る業者を、ヤミ金として全国で初めて摘発したのは茨城県警でした。2023年1月、県警は、スマートフォンなどの買い取りを装って現金を貸していた東京都内の男11人を逮捕したと発表しました。グループは約8か月で約1万3,000人に貸し付け、約4億円の利益を得ていたとみられています。一方、2026年9月28日に金融庁の検索で本店所在地を「茨城県」に指定すると、出てきた正規の貸金業者は5社だけで、個人の業者は1社もありませんでした。この記事では、県警がどうやって「買取」をヤミ金だと見抜いたのかを順に確かめ、茨城の正規の5社と並べて、見分けるための手がかりを整理します。

※事件の内容は、朝日新聞(2023年1月17日)と毎日新聞(同日、練馬区のローカルニュースサイトに転載)の報道、リユース経済新聞、しもひがし法務事務所のブログ(読売新聞・茨城新聞の記事を引用)による。登録業者は金融庁の登録業者の検索(2026年9月28日表示)。

全国初の摘発を、時間の順に並べる

時期 出来事 出どころ
2021年 県警が、同じグループについて「給与ファクタリング会社の利息が高い」という被害相談を受けて捜査を始める。捜査の途中で、グループは営業の形を変えた 毎日新聞
2021年秋ごろ〜 金融庁に、先払い買取についての相談が目立ち始める 毎日新聞・朝日新聞
2021年11月〜2022年7月 グループが「トライ」など五つの買い取りサイトを運営。約4億3,000万円を貸し付け、利息約4億円を含む約8億3,000万円を回収したとみられる 毎日新聞・朝日新聞
2022年1〜9月 弁護士らでつくる「買い取り金融対策全国会議」の集計で、全国の相談は122件 朝日新聞
2023年1月17日 茨城県警が、東京都練馬区の自称会社役員の男(45)ら23〜47歳の男11人を、貸金業法違反(無登録営業)と出資法違反の疑いで逮捕したと発表。この手口の摘発は全国初。押収された古物を扱う許可証やサイト運営のパソコンが、ひたちなか警察署で公開された 朝日新聞・毎日新聞
2023年2月 11人を再逮捕。グループは返済に困った客に別のサイトを紹介し、借り入れを繰り返させていたと報じられる 茨城新聞(しもひがし法務事務所ブログに引用)

表の一行目が示しているのは、このグループが、はじめから「買取」を名乗っていたわけではないということです。給与ファクタリングという別の看板で高い利息を取っていたところ、警察の捜査が入り、看板を先払い買取に掛け替えた。看板の名前は変わっても、お金を渡して、後から多く返させるという中身は同じでした。県警が最初の相談を受けたのは2021年で、逮捕の発表は2023年1月でした。看板を掛け替えられても、捜査は1年以上続いていたことになります。名前を変えれば逃げ切れる、というわけではなかったということです。

もう一つ、表の数字を並べると目に留まるのが、相談の少なさです。弁護士らの全国会議に寄せられた相談は、2022年1〜9月で122件でした。同じ時期に、このグループ一つだけで約1万3,000人に貸していたとみられています。声を上げた人は、借りた人のごく一部だったと考えられます。給与ファクタリングの仕組みは、別の記事で扱っています。 → 給与ファクタリングは違法?

県警は、何を見て「買取ではない」と判断したか

報道によると、グループのサイトは「いつでもどこでも買い取り」「即日高価買い取り」とうたっていました。客は申し込みのフォームに勤務先や雇用形態、手取りの月収を入力し、スマートフォンや携帯ゲーム機の写真を送ります。するとすぐに「代金」が振り込まれ、7日以内に商品を送らないと「違約金」がかかる仕組みでした。7日後、グループは商品が届かないとして、先に払った額と高額な違約金を請求していました。

県警が注目したのは、次の二点だったと報じられています。

県警が注目した点 意味すること
グループに、実際に商品を買い取った実績がない 品物の売り買いは最初から行われていなかった。サイトはヤミ金を隠すための「隠れみの」だった
中古品の買い取りには必要のない月収を、画像を送る前に書かせていた 商品の値打ちではなく、客の返済能力を見ていた。つまり、貸す相手を審査していた

※朝日新聞・毎日新聞(2023年1月17日)の報道による。

この二点から、県警は、買い取り代金が貸付金、違約金が利息にあたると判断しました。「買取」という言葉ではなく、実際のお金と品物の流れで、取引の正体を決めたということです。本物の買取なら、業者が見るのは品物で、売る人の月収ではありません。

「本物の買取」と「買取を装った貸付」を並べる

県警の判断の筋道を、利用者の側から確かめられる形に置き換えます。

確かめる点 品物の買取なら 茨城で摘発された「先払い買取」では
申し込みで聞かれること 品物の状態・型番など 勤務先・雇用形態・手取り月収
お金が払われる時点 品物が届き、査定した後 写真を送っただけで、すぐに振り込まれる
品物を送らなかったとき 取引が成立しないだけ 先に受け取った額に、高額な「違約金」を上乗せして請求される
業者が実際に受け取った品物 ある 買い取りの実績がなかった

いちばん簡単な見分け方は、二行目です。品物が届く前にお金が振り込まれ、品物を送らなければ違約金を取られるなら、それは売買ではなく借金です。金融庁も、先払い買取現金化について、売り手と買い手のどちらも商品の売買を前提にしていない取引が多く、実質的な貸金業にあたる可能性があると注意を呼びかけています。手口の全体は、別の記事でまとめています。 → 先払い買取現金化の全手口

金融庁が挙げる「先払い買取」の特徴と、茨城の事件

金融庁は「商品の買取りをうたって高額な違約金を請求する悪質な業者にご注意ください!」というページで、いわゆる先払い買取現金化の特徴を示しています。そのまま茨城の事件に当てはめると、ほとんどの点が重なります。

金融庁が挙げる特徴 茨城で摘発されたグループ
商品売買を装っているが、契約の解除(キャンセル)を前提にしている 7日以内に商品が届かなければ違約金、という仕組みで、実際には買い取っていなかった
ネット上の商品の画像など、利用者の手元に無い商品を対象にすることが多い。業者の側から商品画像が渡されることもある スマートフォンや携帯ゲーム機の写真を送らせた
業者は商品の価値に関心がなく、主に利用者の収入などで審査する 買い取りに不要な勤務先・雇用形態・月収を、画像を送る前に書かせた
違約金(キャンセル料)の名目の金銭が高額 法定金利の約31〜140倍にあたる利息を違約金の名目で回収した

※左の列は金融庁のページの記載を要約したもの。右の列は朝日新聞・毎日新聞の報道による。

金融庁のページは、商品売買を装っていても、経済的な実態が貸付けで、それを業として行えば貸金業にあたるおそれがあると書いています。茨城県警の摘発は、この考え方を初めて事件として形にしたものでした。手元に無いスマホの写真で「買い取り代金」が入る、という時点で、その取引は品物の売買ではありません。

読売新聞も、グループは中古品の買い取り業を装っていたが実態はなく、古物の売買に必要のない年収などの情報を客に求めていたと伝えています。県警は、ほとんどの客が物品の売買ではなく、借金を目的に契約していたとみていました。県警の見立てどおりなら、客の多くも、借金のつもりで申し込んでいたことになります。看板が「買取」であることは、貸し手にとっても借り手にとっても、形だけのものだったと言えます。

再逮捕で分かった、サイトの使い分け

2023年2月、11人は再逮捕されました。しもひがし法務事務所のブログは、茨城新聞の記事を引いて、男たちが五つの買い取りサイトを運営し、客が返済に困ると別のサイトを紹介して借り入れを繰り返させていたと紹介しています。同じブログは、グループが「ステップ」「ファースト」と名乗る先払い買取業者を営んでいたとも書いています。

返せない客を、別の名前のサイトへ回す。客から見れば、違う業者から新しく借りたように見えますが、実際には同じグループの中でお金が回っているだけです。返済のための借り入れを、同じ貸し手が別の看板で用意していたことになります。名前の違うサイトを渡り歩いても、借金の相手は一つでした。

報道の数字を計算し直す

報道の数字 当サイトの計算
逮捕容疑:茨城県の男性(44)ら11人に計94万4,000円を貸し、利息計70万8,000円を回収 貸した額の約75%を、利息として回収
逮捕容疑の金利:法定金利の約31〜140倍 10万円未満の上限・年20%で換算すると、年約620〜2,800%
全体:約4億3,000万円を貸し付け、利息約4億円を含む約8億3,000万円を回収(約8か月) 貸した額の約93%を、8か月で利息として回収
全体:約1万2,800人に違法に貸し付け(毎日新聞) 1人あたり平均で約3万4,000円を借り、約3万1,000円の利息を払った計算

※朝日新聞は「約1万3千人」「約4億円の利益」、毎日新聞は「約1万2,800人」「約8億3,000万円を回収」と報じている。1人あたりは毎日新聞の数字で割った目安。

1人あたりに直すと、3万円あまりを借りて、ほぼ同じ額の利息を払っていたことになります。「スマホの写真を送るだけで数万円」という手軽さの代わりに、借りた額とほぼ同じお金を上乗せで払わされていたわけです。そして返済に困ると、グループは別のサイトを紹介していました。五つのサイトは、客を逃がさないための回路としても使われていたことになります。

1週間ごとに回すと、どうなるか

読売新聞によれば、グループは画像が届くとすぐに代金として数万円を振り込み、1週間後に「商品が届かない」として、入金額に違約金数万円を上乗せして請求していました。この形に仮の数字を入れて計算します。3万円が振り込まれ、1週間後に違約金1万円を上乗せした4万円を求められるとします。

回し方 受け取った額 払った違約金の合計
1週間で返す 3万円 1万円
別のサイトで3万円を受け取り、前の4万円の一部に充てる、を4週続ける 手元に残るお金は増えない 4万円

※3万円・違約金1万円は計算のための仮の数字で、実際の取引の条件ではない。1週間で3万円に1万円は、年に直すと約1,740%で、報道された「法定金利の約31〜140倍」(年約620〜2,800%)の範囲に入る。

返済に困った客に別のサイトを紹介するやり方では、客は新しい「代金」で前の違約金を払う形になります。1か月続けると、受け取った3万円とは別に、違約金だけで4万円を払っている計算です。借りた額より多い違約金を払っても、最初の3万円はまだ返し終わっていません。報道された「貸した額の約93%を8か月で回収」という数字は、こうした回し方の積み重ねとして読むことができます。

茨城に本店がある正規の貸金業者は5社

ここで、正規の側を確かめます。金融庁の検索で本店所在地を「茨城県」に指定した結果を、全件並べます。代表者名は省きました。

商号 登録番号 本店 登録年月日
株式会社CURAPO 茨城県知事(14)第00488号 土浦市大和町 2023年11月12日
株式会社めぶきリース 茨城県知事(7)第10286号 水戸市南町 2024年4月25日
南総合企画有限会社 茨城県知事(11)第40060号 かすみがうら市下佐谷 2025年11月30日
株式会社エースフィナンシャル 茨城県知事(5)第60009号 日立市幸町 2025年6月17日
株式会社めぶきカード 関東財務局長(14)第00506号 水戸市南町 2024年7月9日

※金融庁の登録業者の検索(2026年9月28日表示)。5社とも日本貸金業協会の会員番号が表示されていた。電話番号は検索結果で確かめられる。

5社はすべて法人で、個人で登録している業者はありませんでした。関東財務局長の登録はめぶきカードだけで、残る4社は茨城県知事の登録、つまり営業所を茨城県内だけに置いている業者です。県外に支店があるような名乗り方をする相手は、この4社とは形が合いません。名前から見て、めぶきリースとめぶきカードは同じ系列とみられ、本店の住所もどちらも水戸市南町3丁目4番12号でした。先払い買取のグループが「茨城の業者」を名乗ったとしても、この5社のどれにも当てはまりません。そもそも逮捕された11人は東京都内の男たちで、茨城の人は客として狙われた側でした。

茨城県のページによると、貸金業の登録は3年ごとに更新する必要があり、書類に不備が無ければ、申請書が受理されてから2か月ほどで登録になるとされています。2025年10月からは、電子申請と手数料の電子納付もできるようになりました。5社の括弧の中はいずれも(5)以上で、新しく登録を受けたばかりの(1)の業者はいません。「茨城で最近始めた業者です」と名乗る相手がいれば、登録番号の括弧の数字と、検索に出てくるかどうかをまず確かめてください。

番号の頭の数字は、そろっていない

茨城県知事登録の4社の番号は、第00488号、第10286号、第40060号、第60009号と、頭の数字がそれぞれ違っていました。当サイトが調べた静岡県や沖縄県の知事登録は、ほとんどが「第0」で始まる5桁、岐阜県は4桁の表示でした。番号の形は県によって違い、同じ県の中でもそろっていないことがあります。形が見慣れないからといって偽物とは限らず、逆に形が整っているからといって本物とも限りません。確かめるのは、番号・商号・所在地・電話番号がすべて検索結果と一致するかどうかです。

隣の県と比べる

本店所在地 件数 うち知事登録 うち個人
千葉県 18 14 4
埼玉県 25 24 2
栃木県 7 5 2
福島県 7 2 1
茨城県 5 4 0

※金融庁の登録業者の検索で、本店所在地を各県に指定して数えた件数(いずれも2026年9月28日表示)。茨城と接する4県を並べた。

茨城は、接する4県(福島・栃木・埼玉・千葉)のどこよりも少ない5件でした。県内で正規の業者を探そうとしても選択肢は限られ、ネットで見つかる「即日」「スマホで簡単」の看板のほうが目に入りやすくなります。全国初の摘発で、逮捕容疑の被害者とされたのも茨城県の男性らでした。

県が公表している行政処分

茨城県の「貸金業について」のページは、県が最近行った貸金業者への行政処分を年度ごとに載せています。令和3年度から令和7年度まで、5年続けて「行政処分の実績はありません」でした。登録を受けた5社の側では、この5年間に処分を受けた例は無いということです。問題が起きていたのは、登録の外側でした。

茨城で「すぐ現金」の看板を見たときの手順

1.品物より先にお金が振り込まれる取引には、申し込まない

写真を送っただけで代金が入り、品物を送らないと違約金がかかる。茨城県警は、この形そのものをヤミ金と判断しました。

2.買取なのに月収や勤務先を聞かれたら、その場でやめる

品物の買取に、あなたの月収は関係ありません。聞いてくるのは、返せるかどうかを見ている貸し手です。

3.「お金を借りる」なら、相手の登録番号を金融庁の検索で照らす

茨城に本店があるなら上の5社のどれかのはずです。県外の業者でも、登録があれば検索に出てきます。

4.返せないと言ったとき「別のサイト」を紹介されたら、同じグループを疑う

摘発されたグループは、五つのサイトの間で客を回していました。名前の違うサイトに移っても、借金は減りません。

5.すでに違約金を請求されているなら、一人で払い続けない

やり取りの画面と振込の記録を残し、次のページの手順で外に相談してください。 → ソフト闇金より先に確かめること

まとめ:茨城県警は2023年1月、スマートフォンの買い取りを装って現金を貸していた東京都内の男11人を逮捕し、先払い買取をヤミ金として全国で初めて摘発しました。グループは五つのサイトで約1万3,000人に約4億3,000万円を貸し、約8か月で約8億3,000万円を回収したとみられています。県警は、買い取りの実績が無いことと、不要な月収を書かせていたことから、代金は貸付金、違約金は利息だと判断しました。茨城に本店がある正規の業者は5社だけで、個人は0です。品物より先にお金が振り込まれる取引はしない。買取で月収を聞かれたらやめる。それが、この手口から外れる一番確かな方法です。

出典:朝日新聞「「中古品買い取り」装い高利貸をした疑い 会社役員ら11人を逮捕」(2023年1月17日)/毎日新聞(2023年1月17日、ネリマンタイムス転載)/リユース経済新聞「「先払い買取」装うヤミ金、初の逮捕者」/しもひがし法務事務所ブログ「先払い買取現金化業者が逮捕―実質的な闇金として全国初の摘発」(読売新聞2023年1月17日・茨城新聞の記事を引用)/茨城県「貸金業について」(2026年4月1日更新)/金融庁 登録業者の検索(本店所在地=茨城・福島・栃木・埼玉・千葉、2026年9月28日表示)/金融庁「商品の買取りをうたって高額な違約金を請求する悪質な業者にご注意ください!」。