2026年9月29日に金融庁の検索で本店所在地を「新潟県」に指定すると、出てきた貸金業者は9社で、個人の業者は1社もありませんでした。9社のうち6社は、県知事ではなく関東財務局長の登録です。一方、新潟に関わるヤミ金の事件は、時代ごとに形を変えて記録に残っています。大手の消費者金融の名前をまねたダイレクトメール、知人どうしの550万円の貸し借り、そして上越市に住む男らが関わったとされる、商品券の「買い取り」を装った全国約6,000人への貸付です。この記事では、三つの事件を年代順に並べ、新潟の正規の9社と照らし合わせて、それぞれの手口をどこで見分けられたかを確かめます。
※登録業者は、金融庁の登録業者の検索で本店所在地を「新潟県」に指定し、2026年9月29日に表示された9件。事件の出どころは、それぞれの節に記した。
新潟のヤミ金は、20年で三つの顔を見せた
| 時期 | 入口 | 何が起きたか | 出どころ |
|---|---|---|---|
| 2008年前後とみられる | 大手消費者金融と同じ名前のダイレクトメール | 商売の運転資金に困った人が電話し、ヤミ金26社に借金を抱えた。4か月で180万円を払い、なお約130万円の借金が残っていた | 新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)の公開記事 |
| 2023年5月〜2024年2月 | 知人どうしの貸し借り | 新潟市江南区の41歳の会社員の男が、知人の20代女性に3回で計550万円を貸したとして、2024年5月に貸金業法違反(無登録営業)の疑いで逮捕された | 新潟日報(2024年5月24日) |
| 2024年12月〜2025年4月ごろ(逮捕容疑) | インターネットのサイトで「商品券」の買い取り | 岩手県警が2025年10月、上越市に住む31歳の男ら5人を貸金業法違反(無登録営業)の疑いで逮捕。全国の約6,000人に7億円以上を貸し付けたとみられる | 新潟日報(2025年10月)、ほか報道 |
※法律事務所の記事には公開日の記載がないが、文中の「一昨年の貸金業法の改正」という記述から、2006年の改正の2年後、2008年前後に書かれたものとみられる。
三つの事件を並べると、入口の形がまったく違うことが分かります。最初は大手の名前を借りた「業者の顔」、次は知人という「人の顔」、最後は商品券の買い取りという「商売の顔」でした。どの顔でも、中身は登録の無い貸付です。見分け方は入口ごとに変わりますが、最後に確かめることは同じでした。
一つ目の顔:大手と同じ名前のダイレクトメール
新潟合同法律事務所が公開している記事によると、ある人の自宅に、大手消費者金融と同じ名前の、若い女性の写真が入ったカラー印刷のはがきが届きました。商売の運転資金が少し足りなかったその人は、はがきのフリーダイヤルに電話します。出た男は「こちらから電話をしますから、一旦、切ります」と言い、折り返しの電話で「20万円の融資ができます」と告げました。
| 記事に書かれた条件と結果 | 当サイトの計算 |
|---|---|
| 20万円の元金に対して、7日間で4万円の利息 | 7日で20%。年に直すと約1,043%(記事では1,042%) |
| わずか4か月で180万円を支払わされた | 1か月あたり平均45万円 |
| 支払いの後も、ヤミ金26社に約130万円の借金が残った | 1社あたり平均で約5万円 |
記事は、返済に行き詰まった後、次々と別のヤミ金から借りるように仕向けられたと書いています。最初の1社から借りた20万円が、4か月で26社との関係に増えていました。そして、利息の代わりに携帯電話そのものを送らされたことや、振込先の口座の名義人が、実は別のヤミ金の被害者だったことも記されています。
記事によれば、その人は弁護士に相談した後、支払いを止め、新潟県警察本部に協力を求めて、嫌がらせをするヤミ金に電話で警告してもらいました。銀行は振込先の口座の凍結に応じ、裁判所は預金の仮差押えを認めたといいます。一方で、商売をしている近くの店や、親族の勤務先に嫌がらせの電話をかけてきたヤミ金もあったと書かれています。大手と同じ名前でも、「折り返しこちらから電話する」という応対の時点で、本物の窓口とは形が違っていました。
他人の名義の携帯電話と口座
同じ記事は、当時のヤミ金の特徴として、厳しい罰則(10年以下の懲役、3,000万円以下の罰金)を逃れるために、「他人名義の携帯電話」と「他人名義の預金口座」を犯罪の道具に悪用していることを挙げています。そして、ヤミ金に対して携帯電話の利用停止を速やかにできるよう、携帯電話不正利用防止法を早く見直す必要があると結んでいました。
この指摘は、今も形を変えて続いています。警察庁の統計では、ヤミ金をめぐる検挙のうち、貸金業に関連した詐欺や、犯罪収益移転防止法違反、携帯電話不正利用防止法違反などの「ヤミ金融関連事犯」が、令和7年(2025年)に501事件ありました。無登録営業や高金利そのものの事件(49事件)の10倍を超えます。ヤミ金の周りでは、今も、他人の名義の携帯電話や口座が道具として回っているということです。記事の中でも、振込先の口座の名義人自身がヤミ金の被害者でした。返せなくなった人の名義が、次の被害者への取り立てに使われる。この構図は、20年近く前の新潟の事例から、すでに記録されていました。
借りる側にとっての教訓ははっきりしています。ヤミ金から「携帯電話を送れ」「口座を貸せ」と言われても、応じてはいけません。記事の人のように携帯電話を利息の代わりに送らされれば、その電話は別の人をだます道具になり、送った本人も罪に問われるおそれがあります。
二つ目の顔:知人どうしの550万円
新潟日報によると、新潟県警新潟中央署と県警生活保安課は2024年5月23日、新潟市江南区の41歳の会社員の男を、貸金業法違反(無登録営業)の疑いで逮捕しました。逮捕容疑は、2023年5月中旬から2024年2月中旬までの間に、登録を受けずに、知人の20代女性に3回にわたって計550万円を貸し付けたというものです。男は「お金は貸したが、貸金業として貸したつもりはない」と、容疑を一部否認していると報じられました。
この事件は、ほかの二つと比べて額が大きく、相手が知人でした。「友だちに貸しただけ」という感覚でも、繰り返し貸していれば貸金業とみなされうるということを示しています。この事件を取り上げた司法書士事務所のブログは、貸金業の「業として」について、最高裁判所の1954年11月24日の大法廷判決が、反復継続の意思をもって貸せば足り、報酬や利益を得る意思や事実は必ずしも必要ないとしていることを紹介しています。そのうえで、少なくとも9か月ほど続けて貸していたことから、この件は「業として」にあたる可能性が高いとみています。相手が一人でも、期間と回数が重なれば、個人の貸し借りの範囲を超えると判断されうるということです。
| 報道の数字 | 当サイトの計算 |
|---|---|
| 約9か月で3回、計550万円 | 1回あたり平均で約183万円 |
| 借りた側は20代の女性 | ― |
借りる側から見ると、知人からの借金は、登録があるかどうかを確かめる発想そのものが生まれにくいものです。けれど、条件を口約束のまま大きな額を借りれば、後で返し方や利息をめぐって弱い立場に立たされるのは借りた側です。知人が相手でも、何度も貸してくる人には、貸金業の登録があるかを聞いてかまいません。
三つ目の顔:商品券の「買い取り」で全国6,000人
2025年10月、岩手県警は、上越市に住む31歳の男、仙台市青葉区の35歳の男ら5人を、貸金業法違反(無登録営業)の疑いで逮捕したと発表しました。新潟日報は、全国の約6,000人に貸し付けていたとみられ、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)の可能性があると伝えています。
報道によると、5人はインターネットのサイトから申し込んできた客に、「商品券」の買い取りを名目に現金を渡し、実際に受け取った現金の約2倍にあたる高額な商品券を客に買わせて返させていたとみられています。逮捕容疑は、2024年12月から2025年4月ごろにかけて、岩手県などの男性7人に計数十万円を貸したというもので、2023年8月に客の弁護士からの情報提供で発覚しました。県警は、全国の約6,000人に7億円以上を貸し付けたとみて調べていると報じられました。岩手日報は同月末、5人が法定利息の最大111倍にあたる超高金利で貸した疑いで再逮捕されたと伝えています。
| 報道の数字 | 当サイトの計算 |
|---|---|
| 受け取った現金の約2倍の商品券を買わせて返済 | 受け取った額と同じだけを上乗せして払う。1か月で返す形なら、年に直して約1,200% |
| 全国の約6,000人に7億円以上 | 1人あたり平均で約11万7,000円以上 |
※「1か月で返す形なら」は計算のための仮定で、報道には返済までの期間は示されていない。
この手口は、2023年に茨城県警が全国で初めて摘発した「先払い買取」と、形がよく似ています。品物の売買を名目にして、実際にはお金を貸し、返すときに多く払わせる。違うのは、スマートフォンの代わりに商品券が使われたことでした。商品券は、買った人から見れば「お金に近い物」です。「受け取った現金の2倍の商品券を買って渡す」というのは、2倍の現金を返しているのと変わりません。茨城の事件の詳しい手口は、別の記事にまとめています。 → 茨城県警が全国初摘発した先払い買取
新潟に本店がある正規の9社
次に、正規の側を全件並べます。代表者名は省きました。
| 商号 | 登録番号 | 本店 | 協会 |
|---|---|---|---|
| 東光商事株式会社 | 関東財務局長(15)第00018号 | 新潟市中央区上大川前通 | 会員 |
| 中越物産株式会社 | 新潟県知事(15)第00140号 | 新潟市中央区美咲町 | 表示なし |
| 第四北越ジェーシービーカード株式会社 | 関東財務局長(14)第00477号 | 新潟市中央区東大通 | 会員 |
| 北越カード株式会社 | 関東財務局長(14)第00491号 | 長岡市今朝白 | 会員 |
| 第四ディーシーカード株式会社 | 関東財務局長(13)第00813号 | 新潟市中央区東大通 | 会員 |
| たいこうカード株式会社 | 関東財務局長(13)第00837号 | 長岡市城内町 | 会員 |
| NSGフィナンシャル株式会社 | 新潟県知事(9)第01443号 | 新潟市中央区古町 | 会員 |
| 株式会社コメリキャピタル | 関東財務局長(6)第01474号 | 新潟市南区清水 | 会員 |
| 株式会社 Wisdom Holdings | 新潟県知事(1)第01532号 | 三条市東三条 | 表示なし |
※金融庁の登録業者の検索(2026年9月29日表示)。番号の順に並べた。協会の欄は、検索結果に日本貸金業協会の会員番号が表示されていれば「会員」とした。電話番号は検索結果で確かめられる。
知事登録より、財務局長登録が多い県
9社のうち、新潟県知事の登録は3社だけで、残る6社は関東財務局長の登録でした。知事登録は営業所が一つの県の中だけにある業者、財務局長登録は二つ以上の都道府県に営業所がある業者です。新潟県のページも、県内にだけ営業所を置いて貸金業を営む者は新潟県知事の登録を受ける必要があると説明しています。
財務局長登録の6社には、名前から見て、地元の銀行系とみられるカード会社(第四ディーシーカード・第四北越ジェーシービーカード・北越カード・たいこうカード)や、企業グループの金融会社とみられるもの(コメリキャピタル)が並んでいます。第四ディーシーカードと第四北越ジェーシービーカードは、本店の住所がどちらも新潟市中央区東大通2丁目1番18号でした。新潟に本店がある正規の貸金業者は、ほとんどがカード会社や企業グループの会社で、街で個人に小口で貸す、いわゆる街金の形のものはほとんど見当たりません。
知事登録の3社のうち、中越物産は括弧の中が(15)で、長く登録を続けてきた業者です。Wisdom Holdingsは(1)で、2025年6月6日に登録されたばかりでした。この2社は、検索結果に日本貸金業協会の会員番号が出ていませんでした。協会への加入は登録の有無とは別の話で、登録番号が検索で確かめられれば、正規の業者です。
登録年月日から見える、次の更新の時期
検索結果には、各社の登録年月日も表示されます。登録の有効期間は3年なので、日付から次の区切りの目安が分かります。9社のうち、いちばん早く3年の区切りを迎えるのは、2024年3月26日の第四北越ジェーシービーカードと、同じ3月30日の北越カードで、どちらも2027年3月です。いちばん新しいのは、2026年8月30日のたいこうカードでした。
(15)の登録回数を持つのは、関東財務局長登録の東光商事と、新潟県知事登録の中越物産の2社です。3年ごとの更新を14回重ねた計算で、40年前後続いてきた業者ということになります。東光商事の番号は第00018号で、関東財務局長の登録番号としては非常に小さい番号でした。長く続いている正規の業者は、番号・登録回数・登録年月日がそろって検索に出てきます。「昔からある新潟の業者」を名乗る相手がいれば、この三つを一度に照らせば足ります。
隣の県と比べる
| 本店所在地 | 件数 | うち知事登録 | うち個人 |
|---|---|---|---|
| 群馬県 | 12 | 9 | 0 |
| 富山県 | 10 | 6 | 0 |
| 新潟県 | 9 | 3 | 0 |
| 福島県 | 7 | 2 | 1 |
| 長野県 | 6 | 4 | 0 |
| 山形県 | 4 | 2 | 0 |
※金融庁の登録業者の検索で、本店所在地を各県に指定して数えた件数(いずれも2026年9月29日表示)。新潟と接する5県を並べた。
新潟と接する5県を並べると、個人の登録業者がいるのは福島の1件だけでした。どの県でも、個人で小口に貸す正規の業者はほとんど残っていません。「個人で貸します」と名乗る相手が新潟や周りの県の人に近づいてきたら、それは登録のある業者ではない可能性が極めて高いということです。江南区の事件の男も、個人として知人に貸していました。
県・財務局・県警が情報を持ち寄る仕組み
新潟県が公表している消費者行政の施策の概要には、「新潟県貸金業関係三者連絡会」という取り組みが載っています。新潟財務事務所、新潟県、新潟県警の三者が、貸金業者の実態などについて情報を交換し、実情の把握に努めるとともに、貸金業法を適正に運用するために必要な事項を協議する場とされています。県は、県知事登録の貸金業者への立入検査も行っています。
登録業者を監督する県と財務局、登録の無いヤミ金を取り締まる警察が、同じ席で情報を持ち寄る。正規の業者の側の問題と、登録の外側の問題を、一つの場で突き合わせる仕組みです。一つ目の事件の記事にも、新潟県警の担当部署がヤミ金に電話で警告したことが書かれていました。記録の上では、新潟では早くから警察がヤミ金の相談に動いていたことが分かります。
三つの顔を見分ける手順
1.大手の名前で届いた案内は、自分で調べた大手の番号にかけ直す
はがきやメールに書かれた番号ではなく、公式サイトで確かめた番号に連絡してください。「折り返しこちらから電話する」という応対は、本物の窓口の形ではありません。
2.知人から繰り返し借りるなら、条件と登録を確かめる
江南区の事件は知人どうしでした。何度も貸してくる相手なら、貸金業の登録があるかを聞いてかまいません。条件は書面に残してください。
3.「買い取り」でお金を受け取り、後で多く払う取引はしない
商品券でもスマートフォンでも、受け取った額より多くを後で払うなら、それは借金です。上越の件では、受け取った現金の約2倍の商品券を買わされていました。
4.新潟の業者を名乗るなら、上の9社と金融庁の検索で照らす
登録番号・商号・所在地・電話番号がすべて一致するかを確かめます。県外の業者でも、登録があれば検索に出てきます。
5.すでに払い続けているなら、一人で抱えない
一つ目の事件の人は、専門家への相談をきっかけに支払いを止めました。外に相談する順番は、次のページにまとめています。 → ソフト闇金より先に確かめること
まとめ:新潟に本店がある正規の貸金業者は、2026年9月29日の時点で9社、個人は0で、6社は関東財務局長の登録のカード会社や企業グループの会社でした。一方、新潟に関わるヤミ金は、大手の名前をまねたダイレクトメール、知人どうしの550万円の貸し借り、商品券の買い取りを装った全国約6,000人への貸付と、時代ごとに入口を変えてきました。大手の名前なら自分で調べた番号にかけ直す、知人でも繰り返し貸す相手には登録を聞く、「買い取り」で後から多く払う取引はしない。入口は違っても、最後に確かめるのは登録番号です。
出典:金融庁 登録業者の検索(本店所在地=新潟・群馬・富山・福島・長野・山形、2026年9月29日表示)/新潟県「貸金業の手続きについて」(2026年9月8日更新)・「新潟県における消費者行政関連施策の概要」/新潟日報「知人女性に計550万円貸し付け、無登録で貸金業を営んだ疑い 新潟市江南区の男逮捕」(2024年5月24日)・「ヤミ金営業疑いで上越市の男ら5人逮捕・岩手県警 6000人に貸し付けか、トクリュウの可能性」(2025年10月)/岩手日報「「ヤミ金」5人再逮捕、法定利息の最大111倍か」(2025年10月)/新潟合同法律事務所「最近のヤミ金事件から」/警察庁「令和7年における生活経済事犯の検挙状況等について」/しもひがし法務事務所ブログ「新潟で闇金逮捕 知人女性に550万円貸し付け」。

