ソフト闇金のサイトには「振込み前ならいつでもキャンセルできます」「キャンセル料は一切かかりません」と書いてあることが多くあります。ところが、法務事務所の記録には、同じ業者について「借りるのをやめたいと伝えてもキャンセル料を求められる」「頼んでいないのにお金を振り込まれる(押し貸し)」という注意が並んでいました。申し込んで途中でやめた人、断ったのに口座にお金が入っていた人に向けて、サイトの約束と記録に残った請求を、同じ表に並べます。
この記事は、当サイトがこれまで公式サイトや保存記録で調べた業者の記載と、法務事務所の記録を抜き出し、金融庁の注意喚起と東京都の消費生活の相談事例に書かれた考え方と突き合わせたものです。業者が「キャンセルできる」とわざわざ書く理由も、申込みの順番から読み解けます。
業者のサイトが書いていた「キャンセル」
当サイトの個別記事で確かめた、業者自身の記載です。
| 業者 | サイトに書かれていたこと |
|---|---|
| 今すぐ(イマスグ) | 「お振込み前であればいつでもキャンセル可能です。もちろんキャンセル料なども一切かかりません」(よくある質問) |
| バモス | 「ご融資前であれば、いつでもキャンセル可能です。お申込み後や審査中でも遠慮なく当店スタッフまでお申しつけ下さい」(よくある質問) |
| モーニング | 振込みの前ならいつでもキャンセルでき、その時に削除依頼があれば「迅速に削除処理いたします」。振込みの後のキャンセルは受け付けない |
| ライツ | 振込みの前ならキャンセルできる。ブログでは良い条件で借りる方法として「キャンセルする前提で申し込みをしてください」「条件が違うのであれば、迷わずキャンセルです」 |
| ハナビ | よくある質問に「完済させない、押し貸し、携帯を買わせる等の詐欺行為は一切行っていません」 |
当サイトの各業者の記事(公式サイト・保存記録の確認日は各記事に記載)。
どの業者も、キャンセルができるのは「振込みの前」です。そして、申込みの順番を見ると、振込みの前に何が終わっているかが分かります。申込みフォームで名前、生年月日、住所、勤め先の名前と電話番号を送り、身分証の画像を送り、場合によっては給料明細や通帳の写しまで送る。キャンセルできると書かれている時点で、業者の手元にはもう、取り立てに使える情報がそろっています。今すぐのサイトは「審査否決の場合は即申し込みデータの削除」、モーニングは削除依頼があれば「迅速に削除処理いたします」とも書いていました。ただ、会社名も所在地も載せていない相手に、本当に消したのかを確かめる手段はありません。消すと書いてあることと、消されたことを確かめられることは、まったく別のことです。→ バモスの申込みフォームが集めていた情報
法務事務所の記録に残っていた「キャンセル料」と「押し貸し」
同じ業者や、同じような業者について、法務事務所の記録が書いていたことです。
| 業者・記録 | 記録に書かれていたこと |
|---|---|
| ハナビ(ウイズユー司法書士事務所、2022年3月9日) | 個人情報を渡したあとに借りるのをやめたいと伝えると、キャンセル料を求められたり、口座に勝手にお金を振り込む押し貸しにあったりする場合がある |
| バモス(同、2024年3月30日) | 同じく、キャンセル料の請求と押し貸しの危険 |
| スカイキャッシュ(同、2025年5月2日) | 「借りるのを止めたい」と伝えてもキャンセル料を請求したり、押し貸しの被害にあう場合がある。キャンセル料は支払う必要が無いが、「関係各所への連絡」をちらつかされて払ってしまう人も少なくない |
| マネーマッチング(同、2025年12月) | キャンセル料の請求と押し貸しの危険 |
| ねずみ屋(アストレックスの記録) | 途中でやめた人にキャンセル料を求め、送った身分証の画像を持ち出して支払いを迫ることがある |
| リリックキャッシング青柳(しもひがし法務事務所、2026年7月) | 申込みの段階で情報を渡しただけでも、断ったのに一方的に振り込む押し貸しの危険 |
当サイトの各業者の記事で確かめた法務事務所の記録。
ハナビは、自分のサイトで「押し貸し」はしないと書いていました。その同じ業者について、法務事務所は押し貸しの危険を注意しています。サイトの約束と記録が、正面から食い違っている例です。キャンセル料も同じで、サイトに「一切かかりません」と書いてあることと、やめようとした時に請求されないことは、別の話でした。→ ハナビの公式サイトと記録の食い違い
押し貸しとは何か、公的な説明
金融庁の「違法な金融業者にご注意!」のリーフレットは、違法な金融業者の手口の一つとして「押し貸し」を挙げ、「契約もしていないのに勝手に銀行口座に現金を振り込み、法外な高金利の利息などを請求する」と説明しています。同じ一覧には、携帯電話の番号と業者名しか書かない「090金融」、架空の登録番号を使う「登録詐称業者」も並んでいました。
東京都の消費生活の相談事例集には、具体的な相談が載っています。題は「『借りない』と断ったのにヤミ金から勝手に振り込まれた」で、申込みを断った後に起きた押し貸しの例です。30代の男性に、ある朝「融資金の2万円から事務手数料3千円を差し引いて1万7千円を口座に振り込んだ。1週間後に利息の2万円を当方の口座に払うように」と電話があり、口座を見ると個人名で1万7千円が振り込まれていた、という事例です。
| 東京都の事例を数字にすると | 金額 |
|---|---|
| 業者が言った「融資金」 | 20,000円 |
| 差し引かれた「事務手数料」 | 3,000円 |
| 実際に振り込まれた額 | 17,000円 |
| 1週間後に払えと言われた「利息」 | 20,000円 |
| 振り込まれた額に対する1週間の上乗せ(当サイト計算) | 約118% |
東京都消費生活総合センターの相談事例「『借りない』と断ったのにヤミ金から勝手に振り込まれた」から当サイトが整理。上乗せ=利息2万円÷振込1万7,000円。
利息の2万円だけで、振り込まれた額を超えています。電話は「利息の2万円」を払えと告げただけで、融資金の2万円をいつどう返すのかは言っていません。言われたとおりに毎週2万円を払い続ければ、4週で8万円です。受け取った1万7千円のおよそ4.7倍を払っても、相手の言う「融資金」は残ったままになります。事例集はこの相談について、以前ヤミ金を利用した時の個人情報が悪用されたと思われる、としていました。一度どこかに渡した情報が、別の業者の押し貸しに使われる流れです。
事例集が示していた考え方
東京都の事例集は、この相談へのアドバイスとして次のように書いています。
- 契約は双方の合意で成立するので、この事例では契約は成立していない
- 著しく高金利で貸し付けている業者には、利息だけでなく元金も含めて返す必要はない
- 取立てに根負けして一度でも払うと、いつまでも関係を断ち切れなくなる
- ヤミ金に教えた銀行口座は、解約するか口座番号を変える
- ヤミ金が使っている銀行口座の凍結を依頼し、凍結した口座に1千円以上の残高があれば、振り込め詐欺救済法の手続で以前の被害額の全額または一部が返ってくる可能性がある
最後の点は、業者の口座が止められた時の仕組みとつながっています。止められた口座の残高が、そこに振り込んだ人たちに分けられる流れは、別の記事で条文と公告の数字から整理しました。→ ソフト闇金と口座凍結|返済した口座と業者の口座の違い
押し貸しのお金が入っていたら、使わずに、入金の日時・金額・振込人の名前をそのまま控えてください。当サイトの業者の記事でも、押し貸しの入金には手をつけず、日時と金額と振込人の名前を控えるよう繰り返し書いてきました。使ってしまうと、借りたという業者の言い分に材料を与えます。業者からの電話やメッセージは消さずに残し、言われた額を言われるままに払わないことが、関係を断つ最初の一歩です。
金融庁のリーフレットが書いていた、押し貸しと取立ての決まり
金融庁のリーフレット「ヤミ金融対策法のポイント」は、平成16年に施行された法改正を説明したものです。罰則の重さや出資法の上限金利など、その後に改められた数字も含まれるので、ここでは今も読み取れる考え方だけを抜き出します。
| リーフレットの記載 | 押し貸し・キャンセル料との関わり |
|---|---|
| 貸金業者は、貸付けや債権の管理・取立てにあたり、不正または著しく不当な手段を用いてはならない。「いわゆる押し貸しなどが禁止されます」 | 押し貸しは、法律で名指しで禁じられた手口として説明されている |
| 取立てで、正当な理由なく午後9時から午前8時に取り立てたり、勤務先など自宅以外に電話や訪問をしたりすること、債務者以外の第三者にみだりに返済を求めることは禁止。無登録業者の行為も罰則の対象 | 「関係各所に連絡する」とちらつかせてキャンセル料を払わせるやり方は、この禁止の内容と重なる |
| 貸金業を営む者が年109.5%を超える利息の契約をした時は、その契約は無効。「この場合、利息は一切支払う必要はありません」 | 東京都の事例の条件は、振り込まれた額に対して1週間で約118%、年に直すと約6,134% |
| 借りる時は契約書を必ず受け取って保管する。契約書を渡さない業者からは借りてはいけない | 押し貸しには、そもそも契約書がない |
金融庁「違法な金融業者にご注意!」リーフレット(ヤミ金融対策法のポイント)。年率の計算は当サイト(利息2万円÷振込1万7,000円×365÷7)。
リーフレットは、ヤミ金業者などが預金口座を使って違法な取立てをする例が社会問題になっているとして、口座の譲渡が行われた場合や法令に反する行為に使われるおそれがある場合に、金融機関が預金取引の停止や口座の解約を迅速に行うよう要請している、とも書いていました。押し貸しの振込元の口座、返済先として指定される口座は、どちらも止められる対象になりうる口座です。
電話で言われがちな言い分と、公的な説明の答え
| 業者が言いそうなこと | 事例集・リーフレットに書かれていた考え方 |
|---|---|
| 「振り込んだのだから返せ」 | 契約は双方の合意で成立する。申し込んでいない押し貸しでは契約は成立していない(東京都の事例集) |
| 「せめて利息だけでも」 | 一度でも払うと、いつまでも関係を断ち切れなくなる(東京都の事例集) |
| 「元金は返すのが筋だ」 | 著しく高金利で貸し付けている業者には、利息だけでなく元金も含めて返す必要はない(東京都の事例集) |
| 「キャンセル料を払わないと会社と家族に連絡する」 | 勤務先など自宅以外への電話や、債務者以外の第三者にみだりに返済を求めることは、取立ての禁止事項として挙げられている(金融庁のリーフレット) |
| 「利息は契約で決まっている」 | 年109.5%を超える利息の契約は無効で、利息は一切払う必要はない(金融庁のリーフレット) |
業者の言い分は、どれも「借りた側の義務」の形で迫ってきます。公的な説明は、その前提である契約そのものが成り立っていない、あるいは無効だ、というところから答えていました。言い分に一つずつ反論する必要はありません。払わず、記録を残し、相手の口座と名乗りを控えておくことが、後で使える材料になります。
先払い買取の「キャンセル料」は、最初から利息の代わり
キャンセル料という言葉が、最初から取引の中心に置かれている手口もあります。金融庁は「いわゆる『先払い買取』現金化に要注意」という注意喚起で、商品の買取りをうたって高額な違約金を請求する業者を取り上げていました。
| 金融庁が挙げた特徴 | 意味すること |
|---|---|
| 商品売買を装っているが、契約の解除(キャンセル)を前提としている | 業者は実際に商品を買い取るつもりがない |
| 手元にない商品の画像などを対象にすることが多く、業者が画像を用意することもある | 商品の価値には関心がなく、審査は主に利用者の収入などで行われる |
| 違約金(キャンセル料)名目の金銭が高額 | キャンセル料が、実質的には利息の役目を果たしている |
金融庁「商品の買取りをうたって高額な違約金を請求するなどの悪質な業者にご注意ください!」。
金融庁は、こうした取引で受け取ったお金は「ヤミ金融からの借金かもしれません」とし、高額な違約金の支払いで生活がかえって悪化し、提供した個人情報が悪用されたりネット上でさらされたりする危険があると書いています。当サイトが調べた先払い買取の業者「かりっぱ」についても、ある法務事務所の記事は、キャンセル料が査定額によって異なり、券面の最大100%を超える額を求められることがあり、商品を送らない場合は振り込まれた額の2倍から、と書いていました。→ かりっぱのキャンセル料の記録
ソフト闇金の「キャンセル料」と先払い買取の「キャンセル料」は、出てくる場面が違います。ソフト闇金では、やめようとした人を引き止める脅しとして出てきます。先払い買取では、キャンセルそのものが最初から予定された支払いです。どちらも、キャンセル料という言葉で、法律の上限を超える利息を別の名前に置き換えている点は同じです。
業者が「キャンセルできる」と書く理由
ライツのブログは、良い条件で借りるには「キャンセルする前提で申し込みをしてください」と勧めていました。同じブログは、情報だけを抜き取る業者もあると書いています。キャンセルできるという言葉は、申し込むことへのためらいを小さくする言葉です。何社にも申し込んで条件を比べてよい、と思わせれば、そのたびに名前と勤め先と身分証の画像が、業者の手元に集まっていきます。→ ライツのブログが勧めていた申込みの仕方
そして、集まった情報は、キャンセル料を求める時の材料になり、押し貸しの振込先にもなり、ほかの業者の手に渡ることもあります。東京都の事例で、男性に押し貸しをした業者は、以前別のヤミ金を使った時の情報を持っていたとみられていました。「キャンセルできる」は、申込みをやめられるという意味であって、渡した情報を取り戻せるという意味ではありません。
| 段階 | 業者の手元にあるもの | この段階で起こりうること(記録に残った例) |
|---|---|---|
| 申込みフォームを送った | 名前、生年月日、住所、電話、勤め先の名前と電話番号 | 断っても一方的に振り込まれる(押し貸し) |
| 身分証の画像を送った | 顔写真つきの身分証 | やめようとするとキャンセル料を求められ、身分証の画像を持ち出して迫られる |
| 在籍確認の書類を送った | 給料明細、通帳の写し、源泉徴収票など | 勤め先や収入、給料日を前提にした取り立ての材料になる |
| 振込みを受けた | 上のすべて+自分の口座番号 | キャンセルは受け付けないとする業者がある。返済の取引に入る |
今、手元でやること
1. まだ申し込んでいないなら、「キャンセルできる」を理由に申し込まない
キャンセルできるのは、情報を送り終えた後です。比べるために何社にも申し込むと、断った業者の手元にも情報が残ります。
2. 途中でやめてキャンセル料を求められたら、払わずに記録する
請求の日時、金額、相手のアカウント名や電話番号、言われた文面を画面ごと残します。法務事務所の記録は、キャンセル料は払う必要がないとしつつ、「関係各所への連絡」をちらつかされて払ってしまう人が少なくないと書いていました。
3. 頼んでいないお金が入っていたら、使わずに控える
入金の日時、金額、振込人の名前を控え、そのお金には手をつけません。業者に教えたことのある口座は、口座番号の変更や解約を考えてください。
4. 何かを払う前に、相手の名乗りを金融庁の検索で確かめる
登録のない業者の請求は、名目がキャンセル料でも利息でも、払う前に一度立ち止まる理由になります。当サイトの業者ごとの記事で、その業者のサイトと記録を確かめることもできます。→ ソフト闇金の条件と記録を一覧で見る
まとめ
- ソフト闇金のサイトは「振込み前ならいつでもキャンセル可能」と書くが、その時点で名前・勤め先・身分証はすでに業者の手元にある
- 法務事務所の記録には、やめようとした人へのキャンセル料の請求と、断ったのに振り込む押し貸しが繰り返し出てくる。押し貸しはしないと書いた業者にも、押し貸しの注意が出ていた
- 金融庁は押し貸しを「契約もしていないのに勝手に銀行口座に現金を振り込み、法外な高金利の利息などを請求する」手口としている
- 東京都の事例では、2万円から3千円を引いて1万7千円を振り込み、1週間後に利息2万円を要求。事例集は契約は成立していないとし、高金利の業者には元金も含めて返す必要はないとしている
- 先払い買取では、キャンセル料が最初から利息の代わり。どちらも名目を変えて上限を超える支払いをさせる仕組み
- 「キャンセル前提で申し込んでよい」と勧める業者のブログもあった。何社にも申し込むほど、情報を渡す相手が増える
借りる前に確かめる順番と相談先は → ソフト闇金で借りる前に確かめること
確かめた資料:金融庁「違法な金融業者にご注意!」リーフレット(ヤミ金融対策法のポイント、違法な金融業者の手口)、「商品の買取りをうたって高額な違約金を請求するなどの悪質な業者にご注意ください!」/東京都消費生活総合センター 相談事例「『借りない』と断ったのにヤミ金から勝手に振り込まれた」(いずれも2026年10月12日閲覧)/当サイトの個別記事で確かめた各業者の公式サイト・保存記録と、ウイズユー司法書士事務所・しもひがし法務事務所・アストレックスの記録
